クルマの”ダイエット”が速さの秘訣? フェルスタッペンが後半戦で圧巻の速さを見せる理由

 

 レッドブルのマックス・フェルスタッペンは、今季11勝をマーク。フェラーリのシャルル・ルクレールに116ポイントもの差をつけ、次戦シンガポールGPで戴冠を決定するチャンスを手にしている。
 現在の圧倒的な強さを誇っているフェルスタッペンだが、シーズン序盤は信頼性トラブルが相次いでいたことをすっかり忘れてしまっている方も多いのではないだろうか。当時はルクレールが大差をつけてリードしており、フェルスタッペンの連覇に向けた挑戦は始まる前に終わってしまうのではないかとさえ思われた。
 その後、レッドブルがRB18の信頼性を確保すると、フェルスタッペンは自分にとって好ましくないマシン特性と戦うことになった。
 フロントエンドが強いマシンを好むフェルスタッペンに対し、そのマシンが肌に合うチームメイトのセルジオ・ペレスがモナコGPで勝利するなど、ペレスがタイトル争いの主役になるのではないかと思われた時期もあった。
 しかしシーズンが進むにつれて、レッドブルとフェルスタッペンは方向修正。特にレースでは一段上の”ギヤ”を見つけることに成功したようだ。
 予選アタックなど、1周のタイムではフェラーリのF1-75のほうがまだ速いように見えるが、RB18のタイヤデグラデーションにおける進歩は目を見張るものがある。そしてチームはその強みを完璧に活かしている。フェルスタッペンがたとえ下位からスタートすることになっても、決勝では見事なリカバリーでポイントを取りこぼすことを防いでいる。
 しかしそれ以上に重要なのは、フェルスタッペンがマシンをより思い通りに振り回すことができるようになったことだ。その結果、ペレスが好むクルマではなくなるという、副作用があったのだが……。
 この変化は、チームが意図的にフェルスタッペンに有利なアップグレードを積極的に採り入れたのではないかという指摘を招いている。
 しかし、実際にはマシンの改良という自然な進化によって、特に初期にはなかったセットアップの自由度が広がったことが進み、フェルスタッペンにとってより有利な展開につながったようだ。
 フェルスタッペンにとっての真のブレークスルーは、空力開発や特別なセットアップではなく、レッドブルがマシンの重量を削減したことで、二重の恩恵を受けたことだと言える。
 今季は各チームがマシンの最低重量オーバーに苦しんだ。カラーリングの大半を剥がすという、涙ぐましい努力も随所で見られた。
 レッドブルも、開幕時は10kgほど重量を超過していたと見られる。それがなくなったことは、そのまま純粋なパフォーマンスアップにつながっている。F1では、10kgで1周0.3秒ほどタイムに影響が出るとされており、ざっと見積もっても、ダイエットによってコンマ数秒は速くなっているわけだ。
 しかしより重要なのは、マシン重量の軽減により、バラスト搭載によってマシンバランスを調整する余地が増えたことだ。
 たとえ数キロだとしても、バラストをリヤ側に移動させれば、フロントエンドのもたつきを解消し、フェルスタッペンが求めるハンドリングに近づけることができたはずだ。
 イタリアGPでフェルスタッペンは、次のように語っている。
「クルマの重量がかなりオーバーしていたんだ。重すぎただけでなく、位置も悪かった。だからアンダーステアが強くなり、フロントロックしやすくなっていたんだ」
 レッドブルのテクニカルディレクターであるピエール・ワシェは、よりアグレッシブなセットアップを施せるほど自由度が広がったことで、フェルスタッペンがマシンから望むものを得られるようになったと説明する。
「シーズン当初はウェイトを動かす余地がなかった。それはセットアップの一部だ」
「でも全てをまとめ上げてからは、マシンのセットアップが少し難しくなり、マックスの方に有利に働いたのだと思う」
「彼はどんなクルマにも乗れると思う。今は、セルジオがパフォーマンスを発揮し、競争できるようなマシンを提供する方法を見つけなければならない」 フェルスタッペンがRB18と完全に馴染んでいる一方で、ペレスがより快適になるためにはもっと多くのことを行なう必要がある。
 ペレスがキャンペーン初期ほどハンドリングに満足していないという状況は、簡単に理解できるとワシェは言う。しかし、難しいのは”マシンを遅くしない”解決策を見出すことだ。
「主な要因は、明らかにカーバランスとマシンへの信頼感だ。彼にとってマシンのバランスが少し良くなり、マックスにとっては少し悪くなったシーズン序盤に比べてね」
「シーズン中にマシンに施した開発のポテンシャルを考えると、そのバランスを変えるというのも、おそらくアップデートの一部なのだろう」
「彼にとって適切なセットアップを見つけ、マックスに勝てる、あるいはマックスと戦えるだけの自信を持たせるのは難しいことだ」
 最終的に、ワシェはペレスが快適に感じられるようにするには、ある程度ラップタイムを犠牲にするしかないかもしれないと語った。
「毎回、パフォーマンスを追求して理論的にクルマを開発しようとすると、セットアップツールの面で行き詰り、クルマのバランスを取り直すのが難しい」
「そうなると、パフォーマンスを少し下げざるを得ない。正しいバランス、望ましいバランスにするためには通常、性能を少し落とすことになる。大幅にではないが、そういう方向性になるんだ」
 
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