【未来のF1ドライバー候補紹介(4)ローソン】一貫性と適応能力をレッドブルが高く評価。2023年はSFタイトルを目指す

 

 2022年の新たなF1規則により、各チームはシーズンに2回、F1昇格を狙うドライバーを金曜プラクティスで起用した。これは、テストの機会が非常に限られる状況のなかで、若手ドライバーにF1マシンに乗るチャンスを与えるために、F1が導入した規定だ。FP1ドライバーとして選ばれた彼らはどのようなキャリアをたどってきたのか、そしてFP1で実際にどういう走りを見せたのかを、F1ジャーナリストのクリス・メッドランド氏がレポート、各チームが最も期待をかけている若手ドライバーの将来性を探る。ニック・デ・フリースユーリ・ビップスロバート・シュワルツマンに続く第4回は、第14戦ベルギーGPと第20戦メキシコGPでアルファタウリ、第22戦アブダビGPでレッドブルからFP1に出場したリアム・ローソンに焦点を当てた。

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 リアム・ローソンは、F1ベルギーGPでFP1初走行のチャンスを得た。FIA F2の2022年シーズン前半、思うような好結果を出せずにいたローソンにとって、そういうポジティブな形で後半戦をスタートできるのは非常に良いことだった。

 ニュージーランド出身のローソンは ニュージーランドのフォーミュラカーレース、トヨタ・レーシング・シリーズで2019年にタイトルを獲得。2020年にはFIA F3でランキング5位、2021年にはFIA F2でランキング9位という成績だった。2019年からレッドブル・ジュニアチームに加入しており、2021年にはレッドブル・AFコルセからDTMドイツツーリングカー選手権に参戦、ルーキーでありながら、タイトル獲得まであと一歩のところまでいった。

レース1を制したリアム・ローソン
レース1を制したリアム・ローソン

 2021年DTM最終ラウンドにランキングトップで臨んだローソンだったが、レース2でタイトル争いのライバル、ケルビン・ファン・デル・リンデに接触された影響で3ポイント差でタイトルを逃した。

リアム・ローソン(レッドブル・AFコルセ/フェラーリ488 GT3 Evo)
リアム・ローソン(レッドブル・AFコルセ/フェラーリ488 GT3 Evo)

 ローソンは、適応するための時間をほとんど取れないままにDTMに参戦したにもかかわらず、経験豊富なドライバーたちを相手に、最後まで素晴らしい戦いを見せた。それまで乗っていたマシンとは異なるタイプのマシンで、すぐさまトップ争いをしてみせ、その多才さでヘルムート・マルコとレッドブルに強い印象を与えた。大きな期待を担ったローソンは、ユーリ・ビップスが差別的な発言をしたことで外された後、レッドブル・ジュニアのなかでトップの存在となった。

 2022年、ローソンはFIA F2に参戦するとともに、レッドブルとアルファタウリのリザーブドライバーの役割を任された。ベルギーGPでのFP1出走のチャンスを手に入れたのは重要なことだった。2022年型マシンで経験を積むことができるからだ。

 この時、ローソンはピエール・ガスリーのアルファタウリで走行。セッション序盤には速さの片鱗と非常に堅実なパフォーマンスを見せたものの、ケビン・マグヌッセンが残り20分のところでコース上でストップし、赤旗が出たために、後半にソフトタイヤで走る機会を失った。セッションは再開されたが、典型的なスパウェザーにより、小雨が降り、トリッキーなコンディションになり、タイムを更新することはできず、19番手にとどまった。

リアム・ローソン(アルファタウリ)
2022年F1第14戦ベルギーGP リアム・ローソン(アルファタウリ)

リアム・ローソン(アルファタウリ)
2022年F1第14戦ベルギーGP リアム・ローソン(アルファタウリ)

 ベルギーの時点で、アルファタウリの2023年ドライバーラインアップは確定していなかったが、ローソンが2度目のFP1走行を果たすメキシコGPの時点では、角田裕毅の契約延長、ガスリーのアルピーヌ移籍に伴うニック・デ・フリース加入が決まっていた。つまり、ローソンが2023年にF1に昇格する可能性はなくなっていたわけだ。

 ローソンには不運な面もあった。デ・フリースは、モンツァでアレクサンダー・アルボンの代役として予選とレースに出場し、ポテンシャルを証明するチャンスを得た。それがF1デビューへのチャンスにつながったのだ。この週末のウイリアムズは競争力が高く、デ・フリースは、予選で好結果を出して、他者のペナルティでトップ10圏内からスタート、オーバーテイクが難しいコースで入賞を果たした。その活躍にいくつかのチームが注目し、2023年レギュラードライバー候補とみなされるようになった。だが、ローソンには、レースでのポテンシャルを披露できる機会はなかった。

 それでもローソンは、メキシコでFP1で走行した際に優れたパフォーマンスを発揮してみせた。ブレーキトラブルのために走行を切り上げなければならなかったが、ルーキー勢トップの16番手となったのだ。

2022年F1第20戦メキシコGP金曜FP1 トラブルでマシンを止めたリアム・ローソン(アルファタウリ)
2022年F1第20戦メキシコGP金曜FP1 トラブルでマシンを止めたリアム・ローソン(アルファタウリ)

 ローソンが優れた一貫性を示したことで、アブダビのFP1ではレッドブルのマシンを託された。これは、彼がチームから求められたことをすべてしっかりこなし、リザーブドライバーにふさわしいと認められていることの証だ。

「マックス(・フェルスタッペン)のマシンに乗るというのは非常に大きな責任を負うことだが、リアム・ローソンはルーキーにもかかわらず非常に良い仕事をしたと思う」とレッドブル代表クリスチャン・ホーナーは後に語っている。

2022年F1第22戦アブダビGP リアム・ローソン(レッドブル)

2022年F1アブダビテスト リアム・ローソン(レッドブル)
2022年F1アブダビテスト リアム・ローソン(レッドブル)

 2022年のローソンは、カーリンでF2タイトルを狙って戦うことが期待されていたが、シーズン中間の時点では、チームメイトのローガン・サージェントほどの成績を挙げていなかった。しかし最終的には4勝を挙げて、ランキング3位を獲得、非常に良い形でシーズンを締めくくることができた。

 ローソンは、究極の目標、F1参戦に向けて戦い続ける。2023年には全日本スーパーフォーミュラ選手権にTEAM MUGENから参戦することが決定。目標はチャンピオン獲得であると明言した。2023年にはスーパーフォーミュラに集中するローソンだが、一方で引き続きF1ではFP1走行の機会が与えられるかもしれない。

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