SeCR初代チャンピオンの武藤壮太。ウイリアムズeスポーツとの契約のきっかけは「1通のメール」
12月17〜18日、国内最大のeモータースポーツの体験イベント『SUZUKA eMotorsports Experience 2022』にて、スーパーGTドライバーや国内トップシムレーサーが参戦するeモータースポーツのプロシリーズ『SUZUKA E-SPORTS CHALLENGE RACE(SeCR)』の第4戦/第5戦の開催が開催され、武藤壮太(Bigholiday eSports Team With 465garage)が、SeCRの初代シリーズチャンピオンに輝いた。
F1に参戦するウイリアムズのeスポーツ部門『ウイリアムズeスポーツ』にも所属する武藤壮太に、2022年シーズンのSeCRを振り返ってもらうと同時に、ウイリアムズeスポーツへの加入の経緯を聞いた。
現在23歳の武藤は、自身が代表を務めるBigholiday eSports Team With 465garageからSeCRに参戦。SeCRでは3勝を挙げたほか、安定した成績を残し続け、最終戦を待たず第4戦終了時点でSeCRの初代チャンピオンに輝いた。
また、Bigholiday eSports Team With 465garageから参戦した小出峻がランキング2位、齊藤祐太がランキング3位を獲得。同チームが全戦全勝を飾ると同時に、ドライバーズランキングでもトップ3を占めるという他を圧倒する成績で2022年シーズンを締め括った。
開催初年度となったSeCRの初代チャンピオンとしてその名を刻んだ武藤は「開幕戦が一番緊張しました」と振り返る。
「周りとの実力差やチーム力の差もわからず、大会のフォーマットも初めてでしたので、どう戦っていいのかがわからない中で挑みました。ただ、チーム一丸となってデータを収集し、戦略を組んで全5戦を戦い、結果的にチームで全勝という結果が得られたので嬉しいです」と武藤。
「逆に、自分のタイトル獲得はどちらかというと『ほっとした』という感じです。iRacingは自分のメインとしているフィールドですし、さまざまなレースに出させていただいて、他の選手の皆さんからも『武藤さんが強い』と言われてる中でした。そういう状況で1回でも弱さを見せてしまうと、一気に(流れが)落ちてしまいます。そうなると周りからの評価も変わりますので、結果としてSeCRというハイレベルなシリーズでも強さや速さを印象付けることができたのは良かったです」
また、Bigholiday eSports Team With 465garageのSUOMIAAKI監督は「私個人としては、SeCRは国内選手限定だったので武藤君がチャンピオンを獲るのは当たり前くらいのつもりで挑みました」とシーズンを振り返る。
「やはり他のモータースポーツでも同じですが、ひとりエースがいると戦略が組み立てやすいです。チームとして開幕からシーズンを通してすごく成長できた1年になったのではないかと思います」
SeCR初代チャンピオンとなった武藤は、F1に参戦するウイリアムズのeスポーツ部門『ウイリアムズeスポーツ』とも契約する唯一の日本人選手だ。改めて、武藤にウイリアムズeスポーツ加入の経緯を聞いた。
「2021年の9月頃に『ウイリアムズeスポーツに興味はありますか?』と、ウイリアムズeスポーツのチームマネージャーから直接メールが届きました。最初はなんで自分に? とも思いました。そこから連絡を取り合い、1カ月ほど入団テストを受けて、2021年の11月からウイリアムズeスポーツの契約選手となりました」と武藤。
「もともと、僕は2019年ごろからiRacingの海外大会に出場していたのですけど、留学のために一旦は活動しない時期もありました。ただ、コロナ禍の影響で留学途中に日本に帰国することになりました。その時間が空いていた中でSUOMIAAKIさんにシミュレーターに取り組める時間を増やせるような環境作りをしてもらい、僕自身も集中してさまざまシムレースに取り組んだ結果、2021年にウイリアムズeスポーツから誘いを受けるまでの評価をいただける力をつけることができた、という感じです」
ウイリアムズeスポーツに加入した武藤は10月7~9日に鈴鹿サーキットで行われたF1第18戦日本GPにウイリアムズから招待を受けた。SUOMIAAKI監督とともに3日間にわたりウイリアムズF1の仕事ぶりをみた武藤は、シムレースのトップ選手だからこその感想を抱いたようだ。
「F1の現場を自分の目で見ることができ、3日間通じて素晴らしい経験ができました。ニコラス・ラティフィとアレクサンダー・アルボンとも会えましたが、ふたりともすごくオーラがありました。そこで、eスポーツでも選手の価値を上げていかなければならないと感じました。eスポーツでは大会の規模や賞金の額が注目を集めますが、『誰々が出場するからeスポーツの大会を見にいきたい』など、そう感じていただけるように僕たちドライバー自身も努力していかなければいけないと、すごく感じました」
「また、シムレーサーとして、F1の現場で何をやっているのかにすごく興味を抱いていたので、ピットでもいろいろなことを聞きました。フリー走行から決勝までチーム無線も聴かせていただいて、ドライバーとエンジニアのコミュニケーションやマシンの方向性の決定など、当然シムレースとは大きく異なりますが、参考になる部分は多かったです。今後、シムレースの精度もより高くなる中で、F1の現場を目にしたことが僕らのチームの財産になるのではないかなと思います」
iRacingの国内有力選手やプロドライバーも参戦したSeCRで他を圧倒する速さ、そして強さを見せた武藤壮太とBigholiday eSports Team With 465garage。2023年もeモータースポーツを中心に、その存在感を随所で見せてくれるに違いない。
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