【未来のF1ドライバー候補紹介(5)フィッティパルディ】オールマイティな能力に定評も、最大のチャンスをつかめず
各F1チームがシーズンに2回、F1昇格を狙うドライバーを金曜プラクティスで起用しなければならないという規則が2022年に導入された。その目的は、テストの機会が非常に限られる状況のなかで、若手ドライバーにF1マシンに乗るチャンスを与えることだ。
当連載では、F1ジャーナリストのクリス・メッドランド氏が、FP1ドライバーとして選ばれたドライバーひとりひとりのここまでのパフォーマンスを評価し、将来性を探る。今回はハースで走ったピエトロ・フィッティパルディに焦点を当てた。
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FP1起用ルールに当てはまる“ヤングドライバー”の条件をみると、必ずしもそれほど若い必要はなく、完全なルーキーである必要もない。そのいい例がピエトロ・フィッティパルディだ。
2度のF1チャンピオン、エマーソン・フィッティパルディの孫である26歳のピエトロは、2020年にF1にデビューしているが、2戦のみの出場であるために、FP1ドライバーの条件に当てはまり、そのためハースは2022年に彼を起用することができた。
リザーブドライバーを務めるフィッティパルディは2019年からハースの一員としての役割を担っており、長年、チームから強い信頼と高い評価を得ている。2020年バーレーンGPでロマン・グロージャンがクラッシュし、負傷した後、その後の最後の2戦に、代役として出場、競争力の低いマシンで非常に堅実な仕事をし、純粋な速さを持つドライバーであることを証明した。
2018年にはWECスパ・フランコルシャンの予選で両足を骨折。しかしすぐに回復し、7月からはインディカーに出場し、11月にはハースでF1初テストを経験、翌年からのテストドライバー契約を結んだ。
フィッティパルディはリザーブドライバーに必要なオールマイティな能力を備えているという定評がある。リザーブドライバーは急な呼び出しを受ける可能性があるため、状況に順応するのが早ければ早いほど、チームとしては助かる。
F1レギュラードライバーへの昇格を目指すフィッティパルディに、2022年初め、大きなチャンスが訪れた。ロシアのウクライナ侵攻により、ハースはロシア人ドライバー、ニキータ・マゼピンをレギュラーの座から外すことを決めたのだ。ところがチームは結局、ベテランのケビン・マグヌッセンを呼び戻すことを決めた。ギュンター・シュタイナー代表は、マグヌッセンから断られていたら、フィッティパルディを起用するつもりだったと明かしている。
それが本心からの言葉かどうかは分からないが、ハースがこの4年のフィッティパルディの仕事に満足しており、チームにとって貴重な存在ととらえていることは間違いない。2022年のFP1ドライバーとして彼を選んだのがその証拠だ。
急きょレースに出場することになった場合に備えて多くの経験を積ませるため、シュタイナーはFP1走行を2回フィッティパルディに任せた。最初のメキシコでは、パワーユニットのトラブルにより、9周しか走れなかった。ソフトタイヤに履き替えてアタックしに行こうとしたアウトラップでマシンが止まってしまったのだ。
2度目のアブダビはスムーズに進んだ。フィッティパルディは速さを発揮、同じソフトタイヤでチームメイトのマグヌッセンと0.06秒差のタイムを記録した。
アブダビでのヤングドライバーテストにもハースから出場したフィッティパルディだが、今後のF1活動についてはまだ発表されていない。ハースは、マグヌッセンとニコ・ヒュルケンベルグのラインアップを確定しており、2023年にもフィッティパルディをレギュラードライバーに選ばなかった。しかしチームは、フィッティパルディとのリザーブドライバー契約を延長することは望んでいる。
フィッティパルディは、2023年、WEC世界耐久選手権に参戦するJOTAに参加し、IMSA LMP2にリック・ウェア・レーシングから参戦することを発表。ハースとの関係が継続されるかどうかは現時点では不明だ。
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