【未来のF1ドライバー候補紹介:プルシェール】アルファロメオ/ザウバーの期待を担い、キャリアの重要な局面を迎える19歳

 

 各F1チームがシーズンに2回、F1昇格を狙うドライバーを金曜プラクティスで起用しなければならないという規則が2022年に導入された。その目的は、テストの機会が非常に限られる状況のなかで、若手ドライバーにF1マシンに乗るチャンスを与えることだ。

 当連載では、F1ジャーナリストのクリス・メッドランド氏が、FP1ドライバーとして選ばれたドライバーひとりひとりのここまでのパフォーマンスを評価し、将来性を探る。今回はザウバーのジュニアチームのメンバーで、アルファロメオでFP1に出場、2023年のリザーブドライバーに就任したテオ・プルシェールに焦点を当てた。

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 2022年にFP1で走行したドライバーのなかで、F1レースドライバーの座をつかむ可能性が非常に高いと思われたひとりが、テオ・プルシェールだった。

 しかし、周冠宇は素晴らしいデビューイヤーを送り、アルファロメオのシートを他のドライバーに渡さざるを得ないような隙を見せなかった。それもあるが、プルシェール自身、2022年のFIA F2では期待どおりの結果を残すことができなかった。

 フランス出身のプルシェールは非常に早い段階で、昨年までアルファロメオF1のチーム代表を務めたフレデリック・バスールに見出され、ジュニア時代を通して彼のサポートを受けることができた。2020年にFIA F3にデビューして以来、バスールが共同設立したARTグランプリで走ってきたのだ。

 2020年、まだ16歳だったプルシェールは、F3デビュー直後に2勝を挙げ、シーズン終盤には、6戦のなかで5回表彰台に上った。そしてオスカー・ピアストリとタイトルを争い、わずか3ポイント差で2位となった。

 そうして2021年にFIA F2に昇格したプルシェールは、第2戦モナコのフィーチャーレースを含む2回の優勝を果たし、ランキング5位を獲得。周冠宇がF1シートをつかみ、プルシェールはこの年の昇格は諦めなければならなかったが、彼の若さを考えれば、この段階で焦る必要はなかった。

 2022年はタイトルに挑戦することが期待され、FP1出走もほぼ保証されていたプルシェールは、2023年にF1にデビューする可能性が十分あるとみられていた。しかし彼はこの年のF2では、期待したほどの成績を残せず、早い段階で、タイトル争いにおいてフェリペ・ドルゴヴィッチから大きく遅れを取ってしまった。

2022年FIA F2第3戦イモラ レース1 優勝を飾ったテオ・プルシェール(ARTグランプリ)
2022年FIA F2第3戦イモラ レース1 優勝を飾ったテオ・プルシェール(ARTグランプリ)

 ドルゴヴィッチにとって一番のライバルだったことは間違いないが、ポイント差をどんどん広げられ、プルシェールがタイトルを獲得する可能性は現実味を失っていった。

 プルシェールにとって不運だったのは、アルファロメオでFP1において走る機会が1回しか与えられなかったことだ。なぜならデビューしたばかりの周冠宇がルーキーとしての資格を満たしていたため、アルファロメオはあと1回だけFP1を若手に与えればよかったのだ。

 周冠宇をFP1ルーキー走行に適用するという“トリック”をアルファロメオが使えたのは1回のみだった。規則では、FP1でそれぞれのマシンが1回ずつルーキーにシートを与えなければならないが、周冠宇がチームメイトのバルテリ・ボッタスの代わりに走るわけにはいかないためだ。

 そういうわけで、残りの1回のチャンスはプルシェールに与えられた。そのアメリカGPで、プルシェールは堅実な仕事をしたものの、周冠宇とは2秒近い差がついてしまった。

テオ・プルシェール(アルファロメオ)
2022年F1第19戦アメリカGP テオ・プルシェール(アルファロメオ)

 ウイリアムズのローガン・サージェントとアレクサンダー・アルボンのタイム差もそれぐらいだったが、サージェントには、その後も何度もFP1に出場し、パフォーマンスを上げていく機会が与えられた。一方のプルシェールは、アメリカの1回しか走行できなかった。

 それでもプルシェールには若さという強みがある。まだ19歳で、すでにF2でランキング2位という実績を作っており、これからたくさんのチャンスがめぐってくるかもしれない。アルファロメオはプルシェールの能力を信じており、2023年のリザーブドライバーのひとりに彼を選び、2022年最終戦後のアブダビテストでも彼を走らせた。

 プルシェールが2023年に目指さなければならないのは、チームが無視できないような圧倒的な結果を出すことだ。F2で今度こそタイトルを獲得しなければ、早々にリザーブドライバーからレギュラードライバーへとステップアップするのは難しくなるかもしれない。

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