F1新規参入のため積極的に動いているのは3チーム。香港の富豪は既存チーム買収を検討か

 

 FIAが、2025から2027年の期間からF1参戦を開始する新規チームの募集プロセスをスタートし、新F1チーム候補がFIAに書類を提出する期限まで2カ月あまりとなった。FIAの情報筋によると、3つのチーム候補がFIAと緊密に連絡を取り合っているという。一方で、他にもいくつかのチームが、適切な書類を提出できる見込みがあるかどうか、もしくは既存のチームを買収するべきか、FIAに簡単な問い合わせをしてきているということだ。

 新規チーム候補のなかで、最も実現の可能性が高いのは、アンドレッティ・グローバルであることは明白だ。キャデラックとの提携が決まった彼らは、2025年からの参戦を目指している。その翌年の2026年には新テクニカルレギュレーションが施行され、シャシーとパワーユニット(PU)の大幅な変更が行われるため、2025年を準備のための1年にしたいと考えているのだ。

アンドレッティ・キャデラックがF1参戦の意向を表明
アンドレッティ・キャデラックがF1参戦の意向を表明

 財政的な保証はかなりしっかりしているようで、インディアナ州フィッシャーズに現在建設中の社屋は明らかにF1の基準を満たしている。

 アンドレッティのプロジェクトにとって最大の問題は、すでにF1経験を持つビッグネームを約2カ月のうちに獲得できるかどうかということだ。FIAが新チームを受け入れる条件のひとつとして、F1界で実績を挙げてきた人々がチームに所属していることを証明しなければならない。アンドレッティは、現在の所属チームを離れることを検討している人々に対し、積極的にオファーを出しているといわれる。

 アンドレッティ以外にF1参戦申請の意志があると公言したのは、パンテーラ・チーム・アジアだ。だが、彼らの試みが成功するとは誰も思っていない。チーム代表のベンジャミン・デュランは、F1に関わった時期は極めて短期間で、現時点で同社のフルタイムの従業員は4人のみで、物理的な施設も持たないことから、FIAが彼らを本格的なF1チーム候補として受け付けるとは考えにくい。

パンテーラ・チーム・アジアのロゴ
パンテーラ・チーム・アジアのロゴ

 同じことはモナコ・インクリース・マネジメントにも言える。彼らは2019年にF1に参戦する意向を発表、それ以来、FIAと何度か話し合いを行った。こうした交渉を担当したのは、リジェ、アロウズ、ルノー、スーパーアグリ、HRT F1などに関わったダニエル・オーデットだった。

 モナコ在住のサルバトーレ・ガンドルフォがモナコ・インクリース・マネジメントを設立、カンポス・レーシングと提携してF1に参戦しようとしたが、2021年初めにエイドリアン・カンポスが早すぎる死を迎えたことで、重要な要素を失った。彼らも施設を持っておらず、任命されたわずかふたりのエンジニアのF1における直近の経歴は2009年のものだということだ。そういうわけで、モナコ・インクリース・マネジメントのプロジェクトをFIAが受け入れたら驚きだ。

 一方で、新規チームとしてエントリーするのではなく、既存チームの買収を考えているとみられるのは、香港を拠点とする若き富豪のカルビン・ローだ。彼は2026年までに彼自身のチームを立ち上げる可能性についてFIAに打診した。ローは、パンテーラ・チーム・アジアと組んでこのプロジェクトに欠けている財政面を支援することを勧められたが、彼自身は、ウイリアムズを買収して準備を始める方へと傾いているようだ。彼はドリルトン・キャピタルがウイリアムズ・レーシングを買収した際の主要な資金提供者であるともいわれている。ウイリアムズはこの3年間に巨額の損失を出しており、今年も主要なスポンサーやパートナーシップ契約を獲得できていない。

2023年F1バーレーンテスト2日目 ローガン・サージェント(ウイリアムズ)
2023年F1バーレーンテスト2日目 ローガン・サージェント(ウイリアムズ)

 現時点では、FIAが新規チームとして認める現実的な可能性があるのは、アンドレッティのみということになりそうだ。

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