【角田裕毅を海外F1ライターが斬る:第3戦】アルファタウリに提案したい、日本人ペアのラインアップ
F1ライター、エディ・エディントン氏による角田裕毅分析コラムが今年も登場。F1での3年目を迎えた角田がどう成長し、あるいはどこに課題があるのかを、エディントン氏が忌憚なく指摘していく。今回は2023年F1第3戦オーストラリアGPについて振り返ってもらった。
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最初に言っておくと、実はオーストラリアには行かなかった。私の年齢や地位からして、24時間も飛行機の中で過ごすなどあり得ない。誰かの招待でファーストクラスで行けるというのなら話は別だが、オーストラリアにはそういうオファーをくれる気が利く企業がなかったので、私は自宅で週末の流れを追うことにした。もちろん、あくまでも自分の活動時間に合わせてだ。オーストラリアは時差が大きくて、全セッションを見るためには、まだ暗いうちに起き出さなければならなかったが、そこまでする義理もない。
さて、私の話はそれぐらいにして、若き角田裕毅について語ろう。今年彼は、F1に参戦し始めて以来、最も堅実なシーズンスタートを切った。オーストラリアでも、11位で惜しくも入賞を逃がすというパターンが繰り返されるものと思われたが、スチュワードがカルロス・サインツに厳しすぎるペナルティを与えたおかげで、角田はついにシーズン初ポイントを獲得することができた。いや、ほっとしたね!
ただ、今回痛切に感じたことは……ああ、もちろん、さっき言ったように、全セッション見たわけではないから、私が見ていた時間帯から感じたこと、ということになるが……そうそう、なぜ今回すべての走行を見ていなかったかというと──。あれ、その話はさっきしたっけ。また脱線して、担当編集者に怒られるところだった。話を続けよう。今回何を感じたかというと、AT04は正真正銘の失敗作であるということだった。ストレートであまりにも遅く、コーナーで速いわけでもない。そのマシンでオスカー・ピアストリ、周冠宇、ケビン・マグヌッセンを相手に戦い、レースの約3分の2でディフェンスし続けたのは、見事というほかない。ライバルたちにとっては、DRSレンジに入ってターン6から9まで来れば、アルファタウリを抜き去るのはこの上なく簡単なことだった。スピード差がありすぎて、角田にはどうすることもできなかったのだ。
例えて言うなら、アルファタウリは、銃撃戦に向かう角田裕毅とニック・デ・フリースに、爪切りを渡して送り出したようなものだった。それなのに裕毅は、トップ10近くにとどまり、自分よりずっと速いマシンを抑え続けながら、ひとつもミスを犯さなかった。週末を通してとても良い走りをしたと評価すべきだろう。
チームメイトと比較すれば、角田がどれだけ良い仕事をしたかが分かる。予選ではデ・フリースに0.236秒の差をつけた。決勝で角田は1ポイントをめぐる戦いに加わっていたが、デ・フリースはそこからはるか後方を走り続けていた。
まとめると、角田は、シーズン初めから常にできる限りのことをやっている。毎回チームメイトに勝ち、チャンスがあれば絶対にそれを逃さず、ポイントをつかむ。ジョディ・エギントンと彼のチームがマシンを改善させるまで、角田にできることはそれだけだ。
今年の角田は非常に立派だと思うが、私は今、彼の後輩で今年FIA F2で走っている岩佐歩夢にもかなり注目している。彼は素晴らしい。F2が初めて開催されたメルボルンで、他のドライバーたちよりずば抜けた走りをしていた。
といっても、来年岩佐が角田のシートに座るべきだと言っているわけではないので誤解のなきように。角田がここで辞めたら、チームは彼が積み重ねてきた3年間の経験を捨ててしまうことになる。そうではなくて、アルファタウリは、ホンダと日本のファンへのお別れのプレゼントとして、来年ふたりの日本人ドライバーを乗せたらいいんじゃないのかな、と思っているのだ。日本のファンは、皆、この意見に賛成だと思うのだが、どうだろう?
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筆者エディ・エディントンについて
エディ・エディントン(仮名)は、ドライバーからチームオーナーに転向、その後、ドライバーマネージメント業務(他チームに押し込んでライバルからも手数料を取ることもしばしばあり)、テレビコメンテーター、スポンサーシップ業務、講演活動など、ありとあらゆる仕事に携わった。そのため彼はパドックにいる全員を知っており、パドックで働く人々もエディのことを知っている。
ただ、互いの認識は大きく異なっている。エディは、過去に会ったことがある誰かが成功を収めれば、それがすれ違った程度の人間であっても、その成功は自分のおかげであると思っている。皆が自分に大きな恩義があるというわけだ。だが人々はそんな風には考えてはいない。彼らのなかでエディは、昔貸した金をいまだに返さない男として記憶されているのだ。
しかしどういうわけか、エディを心から憎んでいる者はいない。態度が大きく、何か言った次の瞬間には反対のことを言う。とんでもない噂を広めたと思えば、自分が発信源であることを忘れて、すぐさまそれを全否定するような人間なのだが。
ある意味、彼は現代F1に向けて過去から放たれた爆風であり、1980年代、1990年代に引き戻すような存在だ。借金で借金を返し、契約はそれが書かれた紙ほどの価値もなく、値打ちがあるのはバーニーの握手だけ、そういう時代を生きた男なのである。
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