F1技術解説:オーストラリアGP(2)メルセデスW14に2番手の速さをもたらした要因
2023年F1第3戦オーストラリアGPで各チームが走らせたマシンを、F1i.comの技術分野を担当するニコラス・カルペンティエルが観察し、印象に残った点などについて解説。「第1回:予選で不利な特性を持ちながらポールtoウインが可能なレッドブルRB19のコンセプト」に続く今回は、改善が見えたメルセデスとアルピーヌに焦点を当てた。
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アストンマーティンがAMR23に導入した独創的な空力アプローチは、オーストラリアでウイリアムズなど他のチームに早速採用されていた。
今シーズン、速さを発揮しているAMR23は、タイヤの持ちが抜群に良い反面、ウォームアップに時間がかかる欠点を持つ。そのためオーストラリアでフェルナンド・アロンソは、ルイス・ハミルトンになかなか迫ることができず、DRSを使いきれなかった。
■メルセデスはなぜ速かったのか
一方でメルセデスW14の競争力は、メルセデスのエンジニアを含め、皆を驚かせた。実際、このマシンの進歩は明らかというべきだろう。
開幕戦バーレーンでは、レッドブル、フェラーリ、アストンマーティンに圧倒され、ラップタイム比0.7%の遅れを取った。第2戦サウジアラビアではフェラーリこそ抑えたものの、勝者セルジオ・ペレスのレッドブルRB19に0.671%の差をつけられ、アストンマーティンに次ぐ3番目に速いマシンに留まった。それがオーストラリアでは、ベンチマークとなるレッドブルに0.308%差まで迫り、2番目に速いマシンとなった。
なぜメルセデスは、突然速くなったのだろう? 昨年行われたサーキットの再舗装で、アルバートパークのアスファルトが柔らかくなったことが大きな要因のひとつだ。その結果、W14は地上高を下げることができ、空力性能を向上させられた。
それに加えて、「第1回」で述べたようなタイヤのウォームアップ方法、低かった路面温度、さらにライバルたちのミス(車体セットアップをレースに振り過ぎたフェラーリ、まともにブレーキングできず、コースオフを繰り返したペレス)などを考慮すると、メルセデスが予選で2、3番手を占めた理由は容易に理解できるだろう。
さらにレースでは、オーバーテイクが難しいコースと、タイヤを温存しなければならないコンディションによって、ライバルたちはマシンのポテンシャルを十分に発揮することができず、メルセデスを大いに助けることになった。
■アルピーヌ:進歩の度合は期待に届かず
ピエール・ガスリーとエステバン・オコンの不運な接触事故はさておき、アルピーヌがオーストラリアで走らせたA523には、有望な兆候を見ることができた。今回アルピーヌは、ヘイローに新しい空力パーツを装着している。
2022年と比較すると、アルピーヌ車はよりポールポジションに近い位置で予選を通過している。たとえば今回のオーストラリアでは、去年の+1.532%に対して+1.229%に留まった(去年のアロンソがQ3でタイムを出せなかったとはいえ)。
大雑把に言えば、バーレーン(2022年の+1.808%に対して2023年は+1.422%)、サウジアラビア(2022年の+0.984%に対して2023年は+0.921%)も同じ傾向である。つまり改善は事実だ。ただしチームが期待していたよりも、おそらく改善度合いは低い。
レースでは、ペレスの予選での不調、シャルル・ルクレールのリタイア、アレクサンダー・アルボンのランオフ、ジョージ・ラッセルのマシントラブルなどに助けられ、オコンとガスリーは同士討ちする前にはポイント圏内に入っていた。マシンに慣れてきたガスリーが、表彰台候補のハミルトン、アロンソ、カルロス・サインツと互角に渡り合えたことも、好材料と言えるだろう。
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