リカルドがアルファタウリF1でシート合わせも、デ・フリース解雇説には根拠なし
レッドブルF1のサードドライバーを務めるダニエル・リカルドが、アルファタウリのファクトリーを訪れてシート合わせを行ったことから、首脳陣は現在苦戦しているルーキー、ニック・デ・フリースをシーズン途中で降ろしてリカルドを後任に据えるのではないかという推測が一部で浮上している。しかし、現時点では、そういった動きが起こる可能性は非常に低そうだ。
マイアミGPの数日後、リカルドがイタリア・ファエンツァで目撃され、同地に位置するアルファタウリのファクトリーでAT04のシート合わせを行ったことが分かった。
2023年シーズン5戦を終えた段階で、今季アルファタウリに加入したデ・フリースはまだF1に慣れることができず、苦労している。F1での3年目を迎えた角田裕毅とのパフォーマンス差は明らかで、予選でデ・フリースは1勝4敗という成績であり、決勝でも角田が2回入賞(10位)しているのに対し、デ・フリースのここまでの最高位は14位にとどまっている。デ・フリースは何度かクラッシュし、それも成績が振るわない原因になっている。
デ・フリースは2022年F1イタリアGPで、アレクサンダー・アルボンの代役として急きょF1デビューを果たし、予選でも決勝でも見事なパフォーマンスを見せ、9位入賞を果たした。モンツァがウイリアムズFW44との相性が非常に良いサーキットであったのは確かだ。しかし、デ・フリースは、FIA F2やフォーミュラEでタイトルを獲得した実績を持っている。それだけに、今季ここまでの彼にレッドブル上層部は失望しているだろうが、だからといってシーズン途中で解雇するという性急な動きに出ることは考えづらい。
過去にレッドブル首脳陣は、アルファタウリ/トロロッソで新人ドライバーを最初のシーズンの途中で解雇したことはない。2006年のスコット・スピードや2018年のブレンドン・ハートレーのように明らかに苦労しているドライバーであっても、フル参戦初シーズンの途中で降ろすことはなかった。最近、アルファタウリのチーム代表フランツ・トストは、「ドライバーがF1を完全に理解するためには3年が必要である」という説を改めて強調した。
「(新人)ドライバーにとって、行うことすべてが自然に思えるようになるには、それだけの時間がかかる。最初の数年は、スピンやクラッシュといったことが起こることをチームは想定していなければならない。(セバスチャン・)ベッテルですら、我々のところに来た最初の年には、ノーズコーンやフロントウイングのない状態でピットに戻って来ることが何度もあった。つまり、ニックはミスをしているが、我々はそれを予想していなかったわけではない」
長いキャリアを経ていくつかのカテゴリーでチャンピオンを経験した28歳のドライバーに、「3年が必要」という通常のロジックを当てはめることには疑問はあるが、それでもレッドブルのモータースポーツコンサルタントを務めるヘルムート・マルコが、デ・フリースを早々に解雇することも、今のところは考えづらい。ルーキーシーズンの途中で外すことは、彼と契約すると決めた約半年前の判断が誤りだったと認めることになるからだ。いま彼を見限ることは、レッドブルにとっては単なる金の無駄になり、デ・フリースのキャリアを台無しにすることにもなる。また、他のドライバーを連れてきて、ろくにテストをしていないマシンにいきなり乗せても、そのドライバーは苦戦することになるだろう。
リカルドがアルファタウリでシート合わせを行ったのは、単に、今シーズンの彼の契約のなかに、レッドブルとアルファタウリのリザーブを務める可能性が含まれているからにすぎない。マルコとトストは、アルファタウリのリザーブドライバーはリアム・ローソンであることを明らかにしている。しかしローソンは今年は全日本スーパーフォーミュラ選手権に参戦しており、5月のモナコGP、6月のカナダGP、10月のメキシコGPの週末には日本のレースに出場することになる。その週末にはリカルドがリザーブを務めるため、シート合わせが必要だったのだ。現実は想像よりもはるかに刺激的でないことが多いが、この件についてもそれが当てはまるといえるだろう。
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