【角田裕毅を海外F1ライターが斬る:第4/5戦】再び文句のつけようがない走り。レッドブル首脳は来季プランの修正必至か
F1での3年目を迎えた角田裕毅がどう成長し、あるいはどこに課題があるのかを、F1ライター、エディ・エディントン氏が忌憚なく指摘していく。今回は2023年F1第4戦アゼルバイジャンGPと第5戦マイアミGPについて振り返ってもらった。
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これがアメリカ流のショーってやつなのか。駐車場にサーキットを作るという発想が、私にはいまひとつ理解できない。それでもシーザーズ・パレスGPに比べれば、ハードロック・スタジアムのコースの方がずいぶんマシだ。3つのセクションには全く違う特性が与えられ、高低差も設けられている。シーザーズ・パレスは同じ4つのコーナーを3回繰り返すレイアウトで……なんだね、また君は無礼にも口をはさんで。
もちろんテーマは角田裕毅だということは忘れちゃいない。そこに向けて、今ウォームアップしていたところだったのに、君が邪魔をしたんじゃないか。角田はヘルムート・マルコに頭痛の種を与えている、そういう話にじっくりつなげていこうとしていたところだ。
マルコは最初はこう考えていたに違いない。「デ・フリースを乗せれば、彼は裕毅をこてんぱんに叩きのめすだろうから、2024年には岩佐歩夢かF2で成績が良かった他の子を乗せよう。そこからまた3年だ」と、だいたいこういった考えだったのだろう。ところが、いざシーズンが始まってみると、角田は予選でも決勝でもニック・デ・フリースより良い成績を出している。最初の5戦をすべて10位か11位でフィニッシュして、堅実さも証明しつつある。一方、デ・フリースのここまでの自己ベストが何位か、今すぐには思い出せないが、バクーでクラッシュし、マイアミでは最初のコーナーでノリスに追突したことは記憶に新しい。こうなると、ヘルムートがどうするのか見ものだ。
私が昔から「裕毅はとても速いドライバーだ」と言っていたのは、皆さんもご存じのとおりだ。2021年と2022年にはたくさんのミスをしたけれど、ミスをしないルーキーなどいない。そして3年目を迎えた角田は、パフォーマンスが優れているとはいいがたいAT04で、一貫性と成熟さを発揮し続けている。
昨年アルファタウリはバクーで好調で、裕毅もガスリーも予選でトップ10に残れた。そして裕毅は予選すべてのセッションでガスリーに0.2秒差に迫っていた。だから今年も裕毅はいい走りをするだろうと予想はしていたが、まさか金曜予選で8番手に入るとは驚いたね! 土曜日のスプリント予選ではチームからトラフィックのなかに送り出されてしまったのでどうすることもできず、スプリントでは1周目にチームメイトから接触されて、フロントウイングを壊してしまった。しかし日曜決勝には文句のつけようのない走りをして、貴重な1ポイントを持ち帰った。
マイアミの決勝でも、ひとつもミスをすることなく、ストロールを最後まで抑えきった。はるかに速いアストンマーティンに乗り、同じタイヤ戦略で走った相手をだ。素晴らしいとしか言いようがない。
「マシンがもっと良ければ」と思うが、それは仕方がない。ドライバーは与えられたマシンで精いっぱい戦うしかない。角田はそれを見事にやってのけている。
来年はレッドブルのシートに空きは出ないし、アルファタウリはトロロッソ時代からずっと、丸々4年間続けて同じドライバーを乗せたことがない。だが、そのポリシーによって、非常に多くの才能あるドライバーたちが投げ捨てられた。カルロス・サインツ、セバスチャン・ブエミ、ジャン-エリック・ベルニュなど、マルコに放り出された後に、素晴らしい仕事をしているドライバーは大勢いる。
マルコか誰か別の人物が(遠くない将来、マルコの後任が決められるといううわさがある)、角田をさらに1年残すという判断をしてくれることを願おう。角田にセルジオ・ペレスの代わりを務める力があるのかどうかは分からない。だが、来年、もっと強力なチームメイトと一緒にアルファタウリで走らせてみて、じっくり評価すればいいではないか。
まぁ、こうなることは私にはお見通しだった。ヘルムートがもっと早く、それなりの報酬を用意して私のもとを訪ねていれば、事前にアドバイスしてあげられたんだが。いま彼に対して言えるのは、「悩んでいても仕方がない。勇気を出して新しいことをやってみるべきだ」という言葉ぐらいか。
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筆者エディ・エディントンについて
エディ・エディントン(仮名)は、ドライバーからチームオーナーに転向、その後、ドライバーマネージメント業務(他チームに押し込んでライバルからも手数料を取ることもしばしばあり)、テレビコメンテーター、スポンサーシップ業務、講演活動など、ありとあらゆる仕事に携わった。そのため彼はパドックにいる全員を知っており、パドックで働く人々もエディのことを知っている。
ただ、互いの認識は大きく異なっている。エディは、過去に会ったことがある誰かが成功を収めれば、それがすれ違った程度の人間であっても、その成功は自分のおかげであると思っている。皆が自分に大きな恩義があるというわけだ。だが人々はそんな風には考えてはいない。彼らのなかでエディは、昔貸した金をいまだに返さない男として記憶されているのだ。
しかしどういうわけか、エディを心から憎んでいる者はいない。態度が大きく、何か言った次の瞬間には反対のことを言う。とんでもない噂を広めたと思えば、自分が発信源であることを忘れて、すぐさまそれを全否定するような人間なのだが。
ある意味、彼は現代F1に向けて過去から放たれた爆風であり、1980年代、1990年代に引き戻すような存在だ。借金で借金を返し、契約はそれが書かれた紙ほどの価値もなく、値打ちがあるのはバーニーの握手だけ、そういう時代を生きた男なのである。
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