【F1第9戦無線レビュー(1)】タイヤに苦戦するフェルスタッペンを必死に追うアロンソ「このレース、勝ちたいんだ」
2023年F1第9戦カナダGP。タイヤに厳しいジル・ヴィルヌーヴ・サーキットでは、レーススタート直後に角田裕毅がライバル勢とは異なる戦略を見せた。またポールポジションかスタートしたマックス・フェルスタッペンは予想外に苦戦し、そのフェルスタッペンをフェルナンド・アロンソが追う展開となった。カナダGP前半を無線とともに振り返る。
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タイヤ劣化の激しいジル・ヴィルヌーヴ・サーキット。大部分のドライバーが、スタートタイヤにミディアムを選択した。19番グリッドの角田裕毅(アルファタウリ)もそのひとりだったが、1周目にピットに向かいハードタイヤに交換した。
1周目
マッティア・スピニ(→角田):ボックス、ボックス!
前方に他車がいないフリーエアでできるだけ長く周回を重ね、順位を上げていく作戦だ。角田はのちに、「あのままチェッカーまで、69周走り切るつもりだった」と語っている。
フロントロウのフェルナンド・アロンソ(アストンマーティン)は、スタートでルイス・ハミルトン(メルセデス)にかわされて3番手に後退してしまう。4番手のジョージ・ラッセル(メルセデス)が、そのアロンソを激しく追う。
4周目
ラッセル:戦略について、早く教えてくれ!
マーカス・ダドリー:今のところプランAだ
オーソドックスなミディアム→ハード→ハードの2回ストップ作戦ということだろう。
5周目
ダドリー(→ラッセル):離されるな、着いていけよ
しかしアロンソとの差は、広がるばかり。逆にアロンソは、2番手ハミルトンとの差をジリジリと詰めていった。
マックス・フェルスタッペン(レッドブル)はハミルトン以下を引き離しにかかるが、早くもタイヤへの危惧を訴える。
7周目
フェルスタッペン:タイヤはFP2より持ちそうにない!
ジャンピエロ・ランビアーゼ:了解した
ここでローガン・サージェント(ウイリアムズ)がターン6でストップ。VSCが導入されたが、すぐに解除された。
ガエタン・イェゴ(→サージェント):マシンを止めろ。次のマーシャルポストでストップだ。重要なメッセージだ
12周目
フェルスタッペン:鳥に当たった!
その後の走行に大きな影響はなかったようだが、右前のブレーキダクトに死骸が残っていたことが、レース後に明らかにされた。
12周目、ラッセルがターン9でクラッシュ。セーフティカー(SC)が導入された。
ラッセル:飛び出した。申し訳ない
ラッセルは緊急ピットイン。右リヤを激しく壁に打ち付けたダメージでリタイアかと思われたが、何とかレースに復帰した。
このSC中に、マクラーレンは2台同時のダブルピットインを決断。オスカー・ピアストリの後に入ることになったランド・ノリスは、できるだけ間隔を開けようとスロー走行でピットに向かった。しかしこれが「スポーツマン精神に反する」と、5秒ペナルティを科されてしまう。
ウィル・ジョゼフ:ランド、5秒ペナルティだ。後方とのギャップを築く必要がある
ノリス:目いっぱいプッシュしてるよ!
SCの最中には、ピットロードでハミルトンとアロンソがあわや接触というシーンもあった。
アロンソ:ブレーキかけないといけなかった!
クリス・クローニン:そうだよ、すごく危険な行為だった
かなり危うい行為に見えたが、最終的にお咎めなしの裁定となった
14〜15周目
ピーター・ボニントン:リヤブレーキの温度が高すぎる
ハミルトン:ダメージはどこから?
ボニントン:ラッセルのだと思う
ラッセルが撒き散らしたデブリを踏んでしまったということか。しかしハミルトンはその後は特にペースが落ちることなく、周回を重ねた。
ハミルトン、アロンソの後ろでは、シャルル・ルクレール、カルロス・サインツと、2台のフェラーリが1秒前後の間隔で走っていた。
23周目
サインツ:僕のペースはいいと思う
26周目
パドロス(→ルクレール):クリーンで速い周回が必要だ。サインツはアタックしない
サインツは暗に、「自分の方がペースがいい。抜かせてくれ」と訴えている。しかしそれは却下されたようで、ルクレールに「背後のサインツのことは心配するな」という無線が飛んだ。
29周目
フェルスタッペン:このタイヤ、もうグリップがない
ランビアーゼ:そのメッセージは、もう受け取った。我慢して行こう
それでも唯一1分16秒台のペースで周回。2番手アロンソは4秒差まで離された。
40周前後になっても、首位フェルスタッペンと2番手アロンソの差は4秒ほど。タイヤのデグラデーションに苦しむフェルスタッペンは、思ったほどアロンソを引き離せない。
48周目
アロンソ:このリフト&コーストでいいのか
クローニン:そうだ
アロンソ:このレース、勝ちたいんだ
コーナーに近づいた際にスロットルから足を離して惰性で進むリフト&コーストは、燃費、ブレーキ、タイヤのために、このサーキットでは絶対に必要な措置だ。しかしアロンソにしてみれば、そんな状況がもどかしい。予想外に苦戦するフェルスタッペンを目の当たりにして、勝利への強い思いを吐露した。
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(2)に続く
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