F1シートを失ったデ・フリースに同情の声「10戦で解雇するのは残忍」とベッテルらレッドブル出身者が首脳陣を批判

 

 レッドブルにわずか10戦で解雇されたアルファタウリF1のルーキー、ニック・デ・フリースに、同情の声が集まり、首脳陣の決断に対する批判もなされている。

 2022年F1イタリアGPでウイリアムズのアレクサンダー・アルボンの代役としてF1デビューを果たしたデ・フリースは、いきなり入賞を果たし、大きな注目を集めた。レッドブルのモータースポーツコンサルタント、ヘルムート・マルコは彼に目を付け、アルファタウリのために獲得したものの、今季10戦のなかで大きな改善が見られないとして、シーズン途中で解雇することを決めた。ハンガリーGPからデ・フリースに代わり、レッドブルのサードドライバー、ダニエル・リカルドが走ることが発表された。

2023年F1第11戦イギリスGP ニック・デ・フリース(アルファタウリ)

■「気の毒な結末を迎えたデ・フリースに同情せざるを得ない」とベッテル

 グッドウッド・フェスティバル・オブ・スピードの準備として、1993年型マクラーレンF1を走らせるためにシルバーストンを訪れた際にベッテルは、この件について聞かれ、「複雑な思いはある。ダニエルは元チームメイトだから、彼のことをよく知っているし、大好きだからね」と述べた後に、こう続けた。

2023年グッドウッド・フェスティバル・オブ・スピード セバスチャン・ベッテル
2023年グッドウッド・フェスティバル・オブ・スピード セバスチャン・ベッテル

「ニックにとって、明らかに残念な終わり方だ。彼には素晴らしいチャンスが与えられたが、彼自身や他の人たちが期待したようには物事が進まなかったのかもしれない。それでも突然終わりにされるのは少し厳しい」

 レッドブルの決断について、かつてこのチームで走ったベッテルは、「残忍だ」と語った。

「5戦、10戦の間に、期待していたようにはうまくいかなかったのかもしれない。理由は分からない。外部の人間だからね。ただ、彼は今も変わらず、非常に優れたドライバーだ。彼が厳しい状況に置かれたという事実に同情せざるを得ない。人々がそのことだけに目を向けることがないといいのだが」

「ニックはF2でチャンピオンになり、国際選手権でタイトルを獲得したドライバーだ。彼はその力を十分認められている。今回のことが彼の自信を傷つけないことを願っている」

■「デ・フリースは運も悪かった」とダ・コスタ

 かつてレッドブル・ジュニアチームのメンバーで、2014年にトロロッソ(アルファタウリの前身)からF1にデビューするという話を突然打ち切られた経験を持つアントニオ・フェリックス・ダ・コスタは、レッドブル首脳陣の厳しさを身をもって経験している。彼はトロロッソのドライバーにすると言われていたにもかかわらず、結局シートはダニール・クビアトのものになった。

 その後、フォーミュラEで活動し、チャンピオンになったダ・コスタは、7月15~16日のローマ戦において、デ・フリースの件についてコメントした。

2023年フォーミュラE ローマE-Prix アントニオ・フェリックス・ダ・コスタ(タグ・ホイヤー・ポルシェ)
2023年フォーミュラE ローマE-Prix アントニオ・フェリックス・ダ・コスタ(タグ・ホイヤー・ポルシェ)

「ニックのことは悲しく思う。F2とフォーミュラEでチャンピオンになった人間が、走り方が分からないことはない。F1に素早く慣れることはとても難しいのだと想像する。2、3日テストしただけで、良いパフォーマンスを発揮することは、大変なことなのだろう。ニックは週末ごとに(チームメイトの)角田裕毅に近づいていた。忘れてならないのは、角田も今のレベルに到達するまでに、うまくいかない日々を経験しなければならなかったということだ」

「F1では物事があっという間に変化する。特にレッドブル陣営ではその傾向が強い。彼らがどれだけ冷酷か、誰もが知っている。正しいか間違っているかという話をするつもりはない。ただ、皆が知っているように、そういう状況なのだ。今回の決定は信じられないほど厳しいものだ。僕自身、キャリアのなかでタイミングの犠牲になった。ニックにとってもタイミングがあまり良くなかったと思う」

「角田はまだルーキーだったころ、何度かクラッシュした。裕毅は素晴らしいドライバーであり、F1で見ていてエキサイティングだ。でも、彼がクラッシュし続けていた時、彼のシートを奪う存在がいなかったため、彼ら(レッドブル)は、角田にチャンスを与え続けた。一方で、残念ながらニックは状況が違った。ダニエルが近くにいたんだ。ダニエルは素晴らしい人物だし、ニックには常にプレッシャーがかかっていたのだと思う。(日本の)スーパーフォーミュラで活躍するリアム・ローソンもいた。そんな風に、ニックにとっては物事がうまくいかなかった」

■クビアト「F1のなかでもレッドブルは特に厳しい世界」

 クビアトは、2016年シーズン途中でレッドブルのシートをマックス・フェルスタッペンに譲る形でトロロッソへと戻された。2017年にはシーズン途中でトロロッソのシートを失うという経験もしている。そのクビアトは、デ・フリースの件について「ニックの状況を僕の場合と比較することはできない」と語った。

2023年フォーミュラE ベルリンE-Prix ダニール・クビアト(NIO 333)
2023年フォーミュラE ベルリンE-Prix ダニール・クビアト(NIO 333)

「きつい環境だ。厳しい世界なんだ。特にレッドブルではね。競争がとてつもなく激しい。時にそういうことが起こる」

「そうだね。彼はシーズン最後まで残るべきだったかもしれない。ただ、僕には内部でどういう話し合いがなされたのか、内部でどういう期待が持たれていたのかが分からないからね」

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