F1日本GPは秋から春へ「シーズンを新鮮な目で見て、純粋に楽しむことが魅力」/斎藤毅ホンダモビリティランド社長インタビュー

 

 2023年のF1日本GPは、鈴鹿サーキットで秋に開催する日本GPとしてひとまず最後のイベントとなった。F1は環境問題を考慮して近い地域のグランプリを同じ時期に開催すると決定したため、2024年の日本GPはオーストラリアGPや中国GPとともに春に開催されることになる。

 これについて、ホンダモビリティランドの斎藤毅社長は、F1側からの提案を受け入れた経緯を説明。すでに7カ月後に迫っている次回の日本GPに関しては、準備期間は大幅に短縮されてしまったが、グランプリ以外でも楽しんでもらうための工夫が必要だと考えていることを明かした。

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──前任の田中薫さんに代わって、今年からホンダモビリティランドの社長に就任して、初めて迎えるF1日本GPはいかがですか。

斎藤毅ホンダモビリティランド社長(以下、斎藤社長):F1日本GPが行われる鈴鹿にはこれまでもホンダに入社して以来、観客として何度か来ていますが、社長になってからは今回が初めてです。一番心配していたのは、天候でした。実は、私は昨年も観客の立場でF1日本GPに来ていたのですが、雨で2時間程度中断になり、大変な状況だったからです。今年はおかげさまで、天気はなんとか持ってくれたので、その点はひと安心でした。

──今回で秋開催はひとまず幕を下ろします。

斎藤社長:F1日本GPが秋の風物詩となっていたのは事実で、その重要な役割をわれわれホンダモビリティランドが担ってきました。シーズン後半戦に行われてきた日本GPは、チャンピオンがだれになるのかという盛り上がりの中で行われてきました。秋開催の日本GPには、そのような価値もあったと思います。今年も白熱したレースが展開され、皆さんが盛り上がってくれることを期待していたので、コンストラクターズタイトルが決まって、記念となる一日となったことは良かったと思います。

──今年はサーキットでのグランプリ開催とともに東京でのイベントもF1と共に開催しました。

斎藤社長:サーキットでのレースだけでなく、レース以外の部分でも盛り上げて、より多くの方にF1に興味を持っていただき、いろんな楽しみ方を味わっていただきたいと思いました。今後も続けていきたいと思います。

斎藤毅ホンダモビリティランド社長インタビュー
ホンダモビリティランドの斎藤毅社長

──来年の日本GPは、2024年4月5日~7日に開催されます。春に開催されることになった経緯を教えてください。

斎藤社長:春開催は、F1側からの提案でした。その背景は環境問題です。できるだけ近い地域でのレースを同じ時期にまとめることで、輸送をミニマムに抑えてCO2を削減していこうという考えの中でうまれたアイディアです。環境問題はF1だけでなく、われわれの会社も安全とともに、第一に考えなければならない課題でしたので受け入れました。環境問題は、われわれがレース活動を今後も長く続けていくための不可欠な必要条件だと思っています。いろいろ課題はあると思いますが、環境問題にチャレンジしていくことに意義はあると思ったので、われわれも春開催に賛同し、同意しました。

──春開催へ向けての課題とは?

斎藤社長:まずは準備期間がこれまでに比べて圧倒的に短いということです。しかも、われわれにとって春開催は初めてとなります。いままでは一年かけて準備してきたのですが、来年に向けてはその準備期間が7カ月しかないので、そのあたりはいろいろと見直してしっかりと対応していかなければならないと覚悟しています。また日本GPはわれわれだけで開催できるものではなく、さまざまな方たちの協力も必要です。特にCO2を削減するためには、できるだけ公共交通機関を使っていただくことが重要になるので、近鉄さん、伊勢鉄道さん、三重交通さんをはじめとする地元の交通機関の皆様に状況を理解してもらい、協力していただくことが大切になります。

──2024年の日本GPのチケットは、今年の12月10日から販売されます。

斎藤社長:4月は期のスタートなので、社会人にしても学生さんにしても新しい一年がスタートする時期なので慌ただしく、F1に注目してもらうことが難しいかもしれないと考えています。ただ、秋開催と違って春開催は、まだどのチームが強いのかがわからない状態なので、そのシーズンを新鮮な目で見て、目の前で起きている戦いを純粋に楽しんでもらえるという魅力があるのでそのあたりもアピールしていきたいですね。

マックス・フェルスタッペン(レッドブル)&ランド・ノリス(マクラーレン)
2023年F1第17戦日本GP マックス・フェルスタッペン(レッドブル)&ランド・ノリス(マクラーレン)

──それから、日本の春といえば、桜の季節ですね。

斎藤社長:そうですね。われわれも日本GPをレースだけでなく観光としても楽しんでもらう工夫をしないといけないと思っています。これに関しては、日本のファンだけでなく、海外のお客さんに対してもアピールしていきたい。三重県には伊勢志摩をはじめ、多くの観光地がありますので、そういった観光も春に楽しんでいただければと考えています。

──ひとまず今年で幕をおろした秋開催の日本GPについて。

斎藤社長:これまでの秋の日本GPは雨で開催されることも多く、観客の皆様にはご迷惑をおかけしたことも多かったと思います。そんな雨の中でも、鈴鹿の観客の皆様は辛抱強く、礼儀正しく観戦してくれました。鈴鹿はコースだけでなく、観客も素晴らしいと世界中から評価されていますが、そういうお客様に支えられて、秋開催が続けることができたのだと思っています。鈴鹿のファンは、世界一のファンだと思います。これまで、秋開催を温かく見守っていただき、本当にありがとうございました。来年から始まる春開催も、これまで同様、温かく見守っていただければありがたいです。これからも日本GPをよろしくお願いします。

斎藤毅ホンダモビリティランド社長インタビュー
2023年F1第17戦日本GP(鈴鹿サーキット)

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