F1技術解説:第5戦(2)新ウイングの導入を中止しつつ最高速向上を図ったフェラーリ
2022年F1第5戦マイアミGPで各チームが走らせたマシンを、F1i.comの技術分野を担当するニコラス・カルペンティエルが観察、印象に残った点などについて解説する。第1回「アップデートなしでフェラーリに勝利。レッドブルRB18が持つふたつのアドバンテージ」に続く第2回では、用意してきた新リヤウイングを使用しなかったフェラーリの、レッドブルへの対抗策について語る。
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レッドブルのトップスピードに対抗するため、フェラーリはマイアミGPに低ドラッグ仕様のリヤウイングを導入することを計画していた。しかしそれは、直前に中止された。イタリアの日刊紙『コリエレ・デラ・セラ』に、マッティア・ビノット代表はこう語っている。
「マイアミに到着して、路面舗装の状態を実際に見て、これが正しい選択ではないことがわかった。直線での速さより、タイヤマネージメントに集中するべきだとね」
初開催のマイアミサーキットの路面舗装は研磨剤の入った特殊なもので、予想以上にタイヤのデグラデーションが大きいことがわかった。しっかりダウンフォースを付ける必要があると、ビノット代表は判断したのだった。
とはいえ少しでも最高速は上げたい。そのためフェラーリのエンジニアたちはサウジアラビアGPと同じようにリヤウイングからガーニーフラップを外し、ストレートエンドで時速数キロメートルを稼ぐことに成功した。
F1-75は加速に優れ、ギヤの変速比も異なるため、ストレートの立ち上がりは速い。それでもストレート区間の終わりでは、そのアドバンテージはなくなっていた。予選ではカルロス・サインツとシャルル・ルクレールは中間計測ポイントで最速だったが(レッドブル最速223.9km/h、フェラーリの最速225.8km/h)、ストレートエンドでは10km/hほど遅くなっていた。
1周のタイムだけでいえば、予選Q3のルクレールはマックス・フェルスタッペンよりコンマ2秒速かった。しかし最高速での失速は、大きなハンデキャップだった。さらにイモラとマイアミでのタイヤダメージを見る限り、フェラーリはレースよりも予選を重視していると言わざるをえない。
とはいえフェラーリの開発部門が、手をこまねいているわけではない。エアロダイナミクス担当者はステアリングロッドのフェアリング形状に変更を加え、マイアミに投入した(黄色矢印参照)。次戦スペインGPでは、さらに重要な新機能が搭載される予定だ。
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