【全ドライバー独自採点/F1第6戦】不運なルクレールは満点の走り。予選も決勝もチームメイトより速かった角田裕毅
長年F1を取材しているベテランジャーナリスト、ルイス・バスコンセロス氏が、全20人のドライバーのグランプリウイークエンドの戦いを詳細にチェック、独自の視点でそれぞれを10段階で評価する。
2022年F1第6戦スペインGPでは、シャルル・ルクレール(フェラーリ)がポールポジションから余裕でレースをリードしていたが、トラブルでリタイア。ミスを犯しトラブルにも見舞われたマックス・フェルスタッペン(レッドブル)が優勝を飾り、チャンピオンシップでも首位に立った。スペインGPでのそれぞれのドライバーたちの戦いぶりを、バスコンセロス氏が振り返る。
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■評価 10/10:週末を通して圧倒的に速かったルクレール
シャルル・ルクレール(フェラーリ)はスペインで1ポイントも手にすることができなかった。しかしこの週末最も優れたドライバーだったことは間違いない。Q3最初のランでのミスにも動じず、最後のアタックで、2番手以下に大差をつけてポールポジションを獲得した。
決勝でも2番手以下を置き去りにして独走、マックス・フェルスタッペン(レッドブル)やカルロス・サインツ(フェラーリ)とは異なり、全くミスをしなかった。PUトラブルさえなければ、余裕で勝利を飾れたはずだった。
■評価 9/10:ランキング首位に躍り出たフェルスタッペンと速さを見せたメルセデス勢
マックス・フェルスタッペン(レッドブル)はスペインで優勝し、ドライバーズ選手権でトップに躍り出た。9周目のターン4でコースオフした後、DRSフラップのトラブルに悩まされていたが、ルクレールが不運にもリタイアし、チームメイトが2度にわたって譲ってくれたことにも助けられて勝利をつかみ、タイトル争いにおいて大きな前進を果たした
ルイス・ハミルトン(メルセデス)は1周目にケビン・マグヌッセンと接触さえしなければ、フェルスタッペンに勝負を挑むことができただろう。ハミルトンはタイヤのパンクでトップから約60秒も後方を走ることになり、「エンジンをセーブするためにリタイアした方がよいのでは」と言うほど絶望的な状況だったが、見事な走りで挽回。終盤、エンジンのオーバーヒートでペースを落とすよう指示されるまでは、フェルスタッペンより速いペースで走っていた。予選で小さなミスを犯したが、決勝は満点の走りだった。
チームメイトのジョージ・ラッセル(メルセデス)も、賞賛に値する走りをし、3位表彰台をつかんだ。予選重視のセットアップを最大限に生かし、決勝では、2台のレッドブルを相手に非常にうまいディフェンスを見せた。
バルテリ・ボッタス(アルファロメオ)もこの週末のスターのひとりだった。エンジントラブルによりFP2を失いながら、予選で7番手を獲得。レースのほとんどを4番手で走行した。大部分のドライバーたちが3回ストップに変更するなか、チームが2ストップ戦略にこだわったことで、ポジションを落とした。
■評価 8/10:ペレスの貢献は来季契約につながるか
セルジオ・ペレス(レッドブル)はレースパフォーマンスではトップのひとりだったが、予選がよくなかった。5番手にとどまり、チームメイトのフェルスタッペンのペースに全く近づけなかったのだ。決勝で犠牲を強いられたのは辛いことだったはずだが、それが来年に向けてレッドブルとの契約を延長する助けにはなるかもしれない。
ランド・ノリス(マクラーレン)は週末を通して扁桃腺炎に悩まされながらも、66周のレースを通して、チームメイトのダニエル・リカルドよりはるかに速いペースで走った。予選では、ターン12のトラックリミットをわずかに越えるという小さなミスによって、Q3に進めなかった。決勝スタートは良くなかったものの、その後は非の打ちどころのない走りをし、ポイントをゲットした。あれほど体調が悪い状態でレースをしっかり戦ってみせたことは賞賛に値する。
■評価 7/10:マシンに苦戦しながら入賞を果たした角田裕毅
角田裕毅(アルファタウリ)は予選でもレースでもチームメイトより速かった。この週末、AT03は期待どおりのパフォーマンスを見せなかったが、角田は必死に戦い、真っ向勝負でセバスチャン・ベッテル(アストンマーティン)に勝ち、10位入賞を達成した。
アルピーヌのふたりはいずれも予選は良くなかったが、決勝で良い走りをした。エステバン・オコン(アルピーヌ)はQ2最後のラップをうまく決めることができず、12番手に終わった。だがそこからレースで貴重な6ポイントを稼いでみせた。
フェルナンド・アロンソ(アルピーヌ)はQ1最初のランで失敗した後、最後の重要なランでピットウォールとのコミュニケーションがうまくいかず、ノリスに引っかかり、17番手に沈んだ。戦略的なパワーユニット交換で最後尾スタートとなったが、そこから、アロンソの真骨頂ともいうべき見事な追い上げを見せ、2ポイントをつかんでみせた。
セバスチャン・ベッテル(アストンマーティン)はモディファイ版マシンの力をすべて引き出し、予選ではチームメイトより0.5秒も速いタイムを記録。2回ストップ戦略で堅実なレースをして、あと一歩で入賞というところまでいった。
■評価 6/10:サインツはアプローチを変えるべき
カルロス・サインツ(フェラーリ)にあまり厳しいことを言いたくはないが、彼がアプローチを変えるべきなのは間違いない。このままではルクレールに勝つことはできないだろう。
予選ではうまくマシンをコントロールして3番手を獲得したが、決勝スタートを完全に失敗、ふたつポジションを落とした。7周目にはターン4でコースオフ、それによってフロアにダメージを負い、優勝を争うチャンスを失った。アルファロメオがボッタスを保守的な戦略で戦わせたこと、ハミルトンが終盤、エンジンの問題を抱えて走らなければならなかったことで、サインツはなんとか4位を手にした。
ケビン・マグヌッセン(ハース)の予選は素晴らしかった。DRSシステムの故障を抱えながら8番手を獲得したのだ。だが、決勝1周目にハミルトンに対して取ったアクションは楽観的すぎた。そのつけを支払う羽目になり、傷ついたマシンで走ったマグヌッセンは2周遅れでフィニッシュという結果に終わった。
■評価 5/10:ミックは入賞のチャンスをつかめず
ミック・シューマッハー(ハース)は土曜は良かったが、日曜がうまくいかなかった。予選でトップ10に入り、決勝ではハミルトンとマグヌッセンのインシデントもあって、1周目に6番手に上がった。しかしタイヤマネジメントがうまくいかず、どんどん順位を下げて14位でフィニッシュした。
アレクサンダー・アルボン(ウイリアムズ)はファーストスティントでは周冠宇(アルファロメオ)やランス・ストロール(アストンマーティン)とバトルをし、1回目のピットストップの後、マシンのフロアにダメージを負い、それがパフォーマンスに影響した。今回はポイント獲得のチャンスは見えてこなかった。
ランス・ストロール(アストンマーティン)は、予選ではベッテルに大きく差をつけられ、決勝でも光るところは見られなかった上に、不運にもピエール・ガスリーにヒットされてスピンを喫した。
チームメイトのボッタスはニューパーツを得て週末を通して好パフォーマンスを見せていたが、周冠宇(アルファロメオ)のマシンにアップデートがなされていなかったことは考慮に入れるべきだろう。今回もスタートが良くなかったが、2ストップ戦略で順位を上げていたなかで、トラブルでリタイアしなければならなかった。
■評価 4/10:屈辱を味わったラティフィ
ニコラス・ラティフィ(ウイリアムズ)は今も、予選でアルボンとの差を縮めることができずにいる。そのうえ、FP1では初めてウイリアムズに乗ったニック・デ・フリースにタイムで負けるという屈辱を味わった。だがレースではアルボンのようなミスを冒すことなく、彼に勝ち、レース終盤にはマグヌッセンを抜いて16位でフィニッシュ、多少はプライドを取り戻した。
ピエール・ガスリー(アルファタウリ)は予選でも決勝でもチームメイトに負け、レースではルクレールとのアクシデントによってタイムペナルティを科された。
■評価 3/10:リカルド、再びノリスに大敗
ダニエル・リカルド(マクラーレン)にとって残念な週末だったと言うしかない。唯一のハイライトは、予選でQ3に進んだことだが、ノリスの抹消タイムはリカルドよりも速かった。
決勝では早くも9周目の段階でチームからノリスを前に出すように指示された。ノリスが8位、リカルドは12番手でレースを終えたことから、チームのその指示は正しかったといえるだろう。リカルドはノリスから45秒も離されていたのだ。
■全ドライバー評価/F1第6戦スペインGP(10段階)
評価 10/10
シャルル・ルクレール:予選1番手/決勝リタイア
評価 9/10
マックス・フェルスタッペン:予選2番手/決勝1位
ルイス・ハミルトン:予選6番手/決勝5位
ジョージ・ラッセル:予選4番手/決勝3位
バルテリ・ボッタス:予選7番手/決勝6位
評価 8/10
セルジオ・ペレス:予選5番手/決勝2位
ランド・ノリス:予選11番手/決勝8位
評価 7/10
角田裕毅:予選13番手/決勝10位
エステバン・オコン:予選12番手/決勝7位
フェルナンド・アロンソ:予選17番手/決勝9位
セバスチャン・ベッテル:予選16番手/決勝11位
評価 6/10
カルロス・サインツ:予選3番手/決勝4位
ケビン・マグヌッセン:予選8番手/決勝17位
評価 5/10
アレクサンダー・アルボン:予選19番手/決勝18位
ランス・ストロール:予選18番手/決勝15位
ミック・シューマッハ:予選10番手/決勝14位
周冠宇:予選15番手/決勝リタイア
評価 4/10
ニコラス・ラティフィ:予選20番手/決勝16位
ピエール・ガスリー:予選14番手/決勝13位
評価 3/10
ダニエル・リカルド:予選9番手/決勝12位
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