F1技術解説:第9戦(1)予想外の資質を発揮し、フェラーリを破ったレッドブルRB18
2022年F1第9戦スペインGPで各チームが走らせたマシンを、F1i.comの技術分野を担当するニコラス・カルペンティエルが観察し、印象に残った点などについて解説。今回は、フェラーリのアップデートを紹介しつつ、レッドブルが勝利しフェラーリが敗北を喫した理由を探る。
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カナダGPでのフェラーリのレースは、決して平坦なものではなかった。F1-75に十分な競争力があったことは、カルロス・サインツがマックス・フェルスタッペンを抑えてレース中の最速タイムを叩き出し、わずか0.993秒差で2位チェッカーを受けたことからも明らかだ。
それにもかかわらず、優勝したフェルスタッペンを破ることはできなかった。レッドブルが今季7勝目を達成できたのには、多くの理由がある。それをこれから説明していこう。
RB18はバクーでの大規模アップデートを経て、カナダの週末はほぼ新パーツの投入はなかった。しかし予選ではウエット路面のトリッキーなコンディションの中で、セルジオ・ペレスはクラッシュを喫したものの、フェルスタッペンは終始優れたパフォーマンスを発揮し、順当にポールを獲得した。
対照的にサインツは、アルピーヌのフェルナンド・アロンソの後塵も拝した。サインツに欠けていたのは、シャルル・ルクレール車にはあったはずのストレートでの速さだった。
フェルスタッペンはレースでも16周に渡って元チームメイトの攻撃に耐えた。冷静さを保ち、ミスを犯さず、最初のDRS検出ポイントでは十分なリードを取ることを心がけた。レース中はバーチャル・セーフティカーとセーフティカーが計3回導入されたが、フェルスタッペンは最後まで決して隙を見せなかった。
そしてこの週末のRB18には、予想外の資質も現れていた。ストレートエンドでのトップスピードよりも、コーナー立ち上がりでのトラクションで優れた性能を発揮したのだ。特にターン10のヘアピンでは、これが大いにフェラーリに苦戦を強いることになった。
モナコでのように低速コーナーでのトラクションに関してはF1-75の方が優れているものと思われていたが、ジル・ビルヌーブ・サーキットではそうではなかった。ルクレールは、ヘアピンでのマシンのグリップ不足を無線で何度も訴えた。エミリア・ロマーニャのときと同じように、雨のためにスクーデリアの準備に支障が出て、正しいセットアップを見つけることができなかったということなのか。
フェラーリは今回、ルクレール車に新型リヤウイングを投入した。これはDRSの効果を高めるため、メインプレート以上に上部フラップでダウンフォースがかかるように目論んだものだったが、奇跡は起きなかった。最後列からスタートし、DRSの列に巻き込まれたルクレールは、自分より遅い相手を追い抜くことにかなり手こずっていた。
そして最後の要因が、パワーユニットやチーム全体の信頼性だった。ルクレールのパワーユニットは前週のバクーで壊滅的な打撃を受けたため、カナダの週末にはターボチャージャーなど5つのエレメントに関して使用制限数を超え、最後方への降格というペナルティを受けた。さらにタイヤ交換時や作戦上のミスもあり、フェラーリドライバーの仕事はいっそう複雑なものとなった。
純粋な信頼性という点では、レッドブルも完璧には程遠い(トラブルによるリタイアはレッドブル4回、フェラーリ3回)。しかし想定外の事態に対処する能力は、レッドブルの方が優れている。
(その2に続く)
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