F1 Topic:グリッドでガスリー車のシートを外して配線を確認する異例の事態に。電気系統は開始90秒前に復活
F1ベルギーGPの国歌斉唱が始まり、グリッド上のスタッフたちが手を休めて、スパ・フランコルシャン・サーキットのホームストレートに響き渡る華麗な歌声を聞いていたころ、ピエール・ガスリー(アルファタウリ)のマシンが停まっていた8番グリッドだけ、別世界となっていた。マシンにトラブルが発生して、スタートできるかどうかという危機的状況に見舞われていたからだ。
テクニカルディレクターのジョディ・エギントンはこう説明する。
「ダミーグリッドに聞いて、ピエールがマシンを降りて、国歌斉唱のセレモニーへ向かった後、マシンに問題が発生したんだ」
フランツ・トスト代表によれば、「電気系の不具合だった」が、問題は原因がわからず、電気系統が動かなくなったままの状態に見舞われていたことだった。
その深刻な様子は、いつも冷静なチーフレースエンジニアのジョナサン・エドルズが担当スタッフと険しい表情でやりとりしている姿を見て、容易に想像できた。
原因が究明できないため、エギントンはシートを外して、コクピット底部の配線を確認させる決断を下す。グリッド上で行う作業としては、異例中の異例だった。
そこに、国歌斉唱のセレモニーを終えたガスリーが戻ってきた。しかし、自分が乗り込むべきコクピットにシートがない。レースエンジニアのピエール・ハムリンがガスリーに近寄り、言葉をかけた。
「彼は僕にこう言ってきた。『これからクルマをガレージに戻すことになった。もしかすると、レースに参加できないかもしれない』とね」
すでにアルファタウリのガレージには、ピットレーンスタートを決めていた角田裕毅のマシンが停まっていた。そこにもう1台、ガスリーのマシンがメカニックに押されて戻ってきた。
しかし、なかなか問題が解決しない。だれもがレースへの参加をあきらめかけていたとき、ガスリーの電気系統が復活した。フォーメーションラップのスタートまで2分を切っていた。
「90秒前、突然ピエールのマシンが生き返った。そこでピットレーンからレースを始められるようにパワーユニットを始動させることができた。ファクトリーへ帰ったら、なぜ何が原因で問題が発生し、どうして復活したのかを調べなければならない」(トスト)
ガスリーにとって、この日のレースは通算100回目の記念すべきレースで、スパ・フランコルシャン・サーキットにはガスリーの両親が駆けつけていた。その特別なレースで奇跡のスタートを切っただけでなく、見事9位でフィニッシュしたガスリーを両親は笑顔で出迎えていた。
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