メルセデスとアストンマーチンが投入した画期的”ウイングデザイン”、2023年は禁止に「新レギュレーションが目指した意図に反する」

 

 メルセデスとアストンマーチンは今シーズン、画期的なコンセプトの空力パーツを投入したが、これは来シーズンの使用が禁止されることになる。
 2022年のF1はテクニカルレギュレーションが大きく変更され、それ以前のマシンとはコンセプトから一新された。
 2021年までのマシンは前後のウイングで大きなダウンフォースを稼いでいたが、2022年はフロア下でダウンフォースを稼ぐ、いわゆる”グラウンド・エフェクトカー”に変貌を遂げたわけだ。それに伴い、マシンのウイングをはじめとして空力パーツはシンプルに。これにより乱流を発生しにくく、さらに乱流の影響を受けにくいマシンへと変貌を遂げ、マシン同士が接近戦をしやすくするようにしたのだ。
 しかし新しいコンセプトになったとはいえ、前後のウイングでダウンフォースを生むことはでき、その発生量が増えればマシンのパフォーマンス向上に寄与する。
 そのためメルセデスはフロントウイングに、アストンマーチンはリヤウイングに画期的なコンセプトを投入した。しかしこれは、今シーズンは使用が許されたものの、2023年はテクニカルレギュレーションがさらに変更されることで、違法となる。
 これらのコンセプトは、マシンのパフォーマンスを向上するという面では、レギュレーションの文言に完全に準拠している。しかしながら、接近戦をしやすくするという”概念”には反していると判断。これらの使用を禁止するよう、レギュレーションの文言が調整された。
 メルセデスの革新的なフロントウイングは、マイアミGPで初めて登場した。
 今季のレギュレーションでは、フロントウイングのメインプレーンやフラップは、翼端板と一体化しているが、メルセデスのそれはフラップと翼端板の接続部に複雑なデザインが取り入れられ、それぞれがほぼ独立するような形になった。
 具体的に見てみると、フラップの最も外側の部分は前方に大きく伸び、細いパーツでのみ翼端板と接続するような格好となった。これによって特に最後部のフラップと翼端板の間に隙間が設けられた。
 これは、新たなレギュレーションにより難しくなった、アウトウオッシュ(車両の両脇に向かって流れる気流)の一部を取り戻そうとしたのだった。
 一方でアストンマーチンは、ハンガリーGPに新しいリヤウイングを投入した。このリヤウイングも、2022年の新レギュレーションの意図を打ち破るように見えるものだった。
 今季のリヤウイングは、メインプレーンとフラップが一体化するような格好となり、後方に乱流を発生させにくいようなことが目指されていた。しかしアストンマーチンはレギュレーションの文言の隙間を掻い潜り、従来型のリヤウイングのように翼端板が上方に伸び、ダウンフォースを増加させることを目指した。
 ただこれも、後方に乱気流を生み出す可能性が高く、新レギュレーションの概念に反するとの判断がなされた。
 このメルセデスとアストンマーチンのコンセプトは、2022年に使えることをFIAも認めた。しかし2023年に向けてはレギュレーションの微調整が正式に行なわれ、これらのアイデアが実現できる根拠となったグレー領域が整理された。
 FIAのシングルシーター部門のテクニカルディレクターであるニコラス・トンバジスは、次のように語っている。
「もちろん、今年はいずれも合法だった。ただそれらの解決策を止めるために、フロントとリヤの両方で、様々な形でレギュレーションが変更された」
 フロントウイングに関しては、フラップの形状に関してより厳格化し、リヤウイングについては定義をより具体的なモノとした。
■パフォーマンスではどんなメリットがあったのか?

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