マシンの軽量化、燃料システムの信頼性向上に成功。三位一体となって2冠を達成したレッドブル/2022年F1戦力分析(6)
新たな技術規則が導入され、前年までとはまったく異なるマシンが誕生した2022年シーズンのF1。マシンの特徴やシーズン中のアップデート、ドライバーのパフォーマンスなどから、各チームの戦力を振り返る。第6回となる今回は、コンストラクターズ選手権のタイトルを獲得したレッドブルだ。
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天才デザイナーであるエイドリアン・ニューウェイ(チーフテクニカルオフィサー)によって開発されたレッドブルの2022年マシン『RB18』は、ニューウェイにとってレッドブル移籍後、17作目となるF1マシンだった。
1990年代にウイリアムズやマクラーレンでチャンピオンマシンをデザインした経験を持つニューウェイは、現在のF1界で最高のデザイナーのひとりと言っていいだろう。とはいえ、現代のF1のマシン開発は風洞実験やコンピュータによる解析技術が主流で、分業化が進んでいる。そんななかでニューウェイがいまなお最高のデザイナーと言われるのは、ニューウェイには風洞実験やコンピュータによる解析技術だけでは判断することができない空力の本質を見抜く能力があるからだ。
こうした資質は、レギュレーションが大きく変わる場面で能力を発揮する。2009年にそれまで中団グループにいたレッドブルが一気にチャンピオンシップ争いに加わったのは偶然ではない。今回のレギュレーション変更が2009年以上に大きな改革だったことは、前年までコンストラクターズ選手権で8連覇していたメルセデスが、わずかシーズン1勝にとどまったことでもわかる。そんななか、ニューウェイがデザインしたRB18はプレシーズンテストから速かっただけでなく、多くのチームが悩まされたポーパシング(ポーポイズ現象)をいち早く克服していた。
空力のコンセプトは間違っていなかったが、ニューウェイがデザインしたマシンをレギュレーション変更に合わせて製造すると、どうしても重くなってしまった。レッドブルが序盤戦でフェラーリの後塵を拝したのはそれが主な理由だった。また序盤戦では信頼性に課題が残っていたことも露呈した。
そこでレッドブルはヨーロッパラウンドに入った4月以降、マシンの空力コンセプトはそのままに、とにかくマシンの軽量化を主眼にパーツをアップデートさせていった。さらにホンダ・レーシング(HRC)の協力を得て、燃料システムの信頼性も向上させることに成功した。この結果、第4戦エミリア・ロマーニャGPから第9戦カナダGPまで6連勝し、一気にフェラーリを逆転して、チャンピオンシップ争いで優位に立った。
2021年にドライバーズチャンピオンとなったマックス・フェルスタッペンに、王者の風格が備わったことで、レッドブルの優位性は後半戦に入っても揺るがなかった。フェルスタッペンは夏休み明け9戦で7勝を挙げ、年間15勝の最多優勝記録を樹立した。
チームメイトのセルジオ・ペレスはモナコGPとシンガポールGPを制し、自身初の年間複数優勝を達成。11回の表彰台を獲得し、前年より一気に100点以上多い305点をマーク。チームとして年間17勝は、2013年の13勝を上回るチーム史上シーズン最多勝利だ。
チームスタッフも最高の仕事をした。2022年のF1は18インタタイヤになってホイールの重量が増した。そのため、ピットストップ作業が前年よりもやや遅くなった。それでも、レッドブルはシーズンを通して安定したピットストップ作業を行い、前年に続いてピットストップ作業の年間王者とも言える『DHL Fastest Pit Stop Award』を獲得(IMG_1104.JPG)。マシン、ドライバー、チームが三位一体となって勝ち取った9年ぶりの2冠だった。
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