新車発表会で実車走行のフェラーリF1『SF-23』。正常進化マシンと「フェラーリの速さ」で王座奪還を目指す
2月14日のバレンタインデーに唯一の新車発表会を催したのは、F1で最も伝統があるチーム、フェラーリだった。会場となったフェラーリの本拠地、イタリア・マラネロの特設ステージを見下ろすスタンドは、フェラーリが招待したゲストとティフォシ(フェラーリの熱狂的なファン)で埋め尽くされていた。
現地時間11時25分に開始されたイベントは、バイオリニストが奏でるイタリア国歌『マメーリの賛歌』ととともに幕が開けた。フェラーリの発表会は10チーム8番目だったが、その発表会はここまで行われた7チームとは明らかに一線を画していた。
そのひとつが、カラーリングの発表ではなく、実車を用意していたことだ。
2023年シーズンからフェラーリのチーム代表となったフレデリック・バスールはこう言う。
「他のチームのことは言いたくないが、彼らの多くはバーチャルやオンラインでの配信で(新車発表を)行っていたと思う。我々は会場にティフォシやゲストを招待した。彼らと一緒にこのようなイベントを行えることを誇りに思う」
昨シーズンはチャンピオン争いを演じながら、レッドブルに完敗したフェラーリが2023年にどのようなコンセプトで新車を開発するのかが注目されたが、この日発表された新車『SF-23』は、2022年のマシン『F1-75』のコンセプトを継続させた正常進化版となっていた。
多くのチームがサイドポンツーンの形状を“ダウンウォッシュ”と呼ばれるレッドブル型にしてきたなか、フェラーリはサイドポンツーンの上面がくぼんだ“バスタブ”型をさらに進化させてきた。
上面だけでなく、サイドポンツーンの下型部分にも手が加えられた。サイドポンツーンの前方と後方は昨年よりもよりえぐられ、ノーズ下を通る空気がより高速で後方へ流れるようになっている。
ただし、ノーズのコンセプトは変更されたようだ。昨年までのフェラーリは、ノーズ先端があるフロントウイングの一番下にあるメインフラップまで接続されたロングノーズを採用していたが、SF-23では下から2枚目のフラップと接続され、ややショートノーズとなった。
そのほかにも、ヘイローの上面にフィンを追加したり、インダクションポッド両脇のホーンウイングの形状を変更するなど、空力パーツの細かな変更もしっかりと見せてくれたあたりは、さすが伝統のチームだ。
さらにこの発表会でライバルチームが決して真似できなかったことは、発表したばかりの新車を実際に走らせるというイベントを台本のなかに用意していたことだった。マラネロの目の前にフィオラノという自社のプライベートサーキットを所有するフェラーリにしか組み込めないプログラムだ。
ただし、現在のF1では基本的にテストは禁止されているため、フェラーリはこのイベントをレギュレーションで許された年間100km以下に定められている“フィルミングデー”の枠で行った。フェラーリはふたりのドライバーを平等に扱うという観点から、前日の13日にコイントスを行い、どちらが先に運転するを決めるという徹底ぶりをみせた。そのコイントスに勝ったシャルル・ルクレールが、新車SF-23に乗ってフィオラノを走行した。
新車発表イベントはルクレールが2周してピットインを行い、マシンを降りたあたりで幕を下ろした。しかし、フィオラノでのテスト走行はまだ終わっていなかった。コイントスに負けたカルロス・サインツにも、3周の走行が予定されていた。
バスールは言う。
「どちらがナンバーワンかということより、大切なことはフェラーリが速いかどうかということ」
2022年にレッドブルとチャンピオンシップ争いを展開したフェラーリ。そのDNAを搭載したSF-23が、2023年もチャンピオンシップ争いをすることは、ほぼ間違いないだろう。
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