ハミルトンに関し差別発言を行った元F1チャンピオンのネルソン・ピケに、1億2000万円の罰金判決

 

 ルイス・ハミルトン(メルセデス)に関して人種差別的および同性愛嫌悪的なコメントを行った3度のF1チャンピオンであるネルソン・ピケに対し、人権団体が起こしていた訴訟に関して、ブラジルの裁判所が、道徳的損害賠償として、ピケに約1億2,400万円の罰金を科すことを決めた。

 F1で唯一の黒人ドライバーであるハミルトンについて、ピケが2021年に差別的発言を行ったことが、2022年に広く伝えられた。ピケは2021年11月に公開されたポルトガル語でのポッドキャストのなかで、2021年F1イギリスGPでのハミルトンとマックス・フェルスタッペン(レッドブル)の接触について語った。ピケは事故についてハミルトンを非難、この際に複数回、ハミルトンを名前で呼ばずに差別的な意味を持つと思われる単語を使った。

 さらに、ピケは、ポッドキャストの中で、2016年にハミルトンがチームメイトのニコ・ロズベルグとのタイトル争いに敗れたことについて語る際に、人種差別的な言葉、同性愛嫌悪的な言葉を使用したといわれている。

2023年F1第2戦サウジアラビアGP ルイス・ハミルトン(メルセデス)
2023年F1第2戦サウジアラビアGP ルイス・ハミルトン(メルセデス)

 この件に対して、2022年6月には、F1、FIA、ハミルトンが所属するメルセデスをはじめ、複数のチームやドライバー、モータースポーツ界以外の人々が、ピケに対する非難の声明を発表した。ピケはこれを受けてコメントを発表、騒動を謝罪する一方で、自身に人種差別的な発言を行う意図はなかったと主張した。ピケは、自身が使った言葉は報道で誤った意味で翻訳されたとして、人種差別的発言を行ったとの批判に、強く反論した。

 しかしブラジルのLGBT+アライアンスを含む4つの人権団体がこの問題を激しく糾弾、ピケに道徳的損害への賠償として、1000万ブラジル・レアル(約1億4800万円)の支払いを求めた。これに対して、ブラジリアの裁判所は、集団道徳損害賠償として、要求額の半額500万レアル(約1億2400万円)の支払いをピケに命じたことが明らかになった。この500万レアルは差別反対の活動のための資金に当てられる。

 ペドロ・マトス・デ・アルーダ判事は、「民事責任の賠償機能だけでなく、(おそらく主に)懲罰的機能も評価する必要があるという意味で」金額が決定されたと述べた。また、「社会として、いつの日か人種差別や同性愛嫌悪という悪質な行為から解放されるようにするため」とも語った。

 ハミルトンは2022年6月に、ブラジルの名誉市民権を授与されている。

2021年F1ブラジルGPで優勝したルイス・ハミルトン(メルセデス)

 ピケが他人に対する侮辱的発言を行ったのはこれが初めてではなく、1988年には雑誌のインタビューのなかで、ナイジェル・マンセルを「無学のバカ」と呼び、マンセルの妻のことを「醜い」と言ったことがある。1982年チャンピオンのケケ・ロズベルグについて「価値のないくそ野郎」と発言したこともあった。

 ピケは、ハミルトンに対する発言により、ブリティッシュ・レーシング・ドライバーズクラブの会員資格を停止され、さらに、F1パドックを訪れることを禁じられたともいわれている。

2018年F1第9戦オーストリアGP 予選:バルテリ・ボッタスがポールポジションを獲得
2018年F1第9戦オーストリアGP ポールポジションを獲得したバルテリ・ボッタスとネルソン・ピケ

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