レッドブル&HRC密着:SC導入で首位浮上。自己ベストを出し、ウォールに接触しつつも僚友を近づけなかったペレス

 

 アゼルバイジャンでF1のレースが初めて開催されたのは、2016年。記念すべき最初のレースで優勝したのはニコ・ロズベルグ(メルセデス)だった。その後、ダニエル・リカルド(レッドブル)、ルイス・ハミルトン(メルセデス)、バルテリ・ボッタス(メルセデス)、セルジオ・ペレス(レッドブル)、マックス・フェルスタッペン(レッドブル)と勝者は開催ごとに異なるドライバーが続いた。

 そして、2023年の今回、7回目にして初めて表彰台の頂点に2度上がったのが、ペレスだった。

 チェッカーフラッグを受けた後、パルクフェルメで1996年のワールドチャンピオンのデイモン・ヒルに、「バクーで2度優勝した唯一のドライバー」と紹介されたペレスは、「2.5勝だ」と笑って返した。

セルジオ・ペレス(レッドブル)
2023年F1第4戦アゼルバイジャンGP 優勝したセルジオ・ペレス(レッドブル)

 この2.5勝は、土曜日に行われたスプリントでの勝利を加えた数字だ。今回の勝利でペレスは通算6勝を挙げたが、そのうち初優勝の2020年サクヒールGP以外の5勝は、アゼルバイジャンGP(2回)、モナコGP、シンガポールGP、サウジアラビアGPといずれもストリートコースで挙げたもの。クリスチャン・ホーナー代表も「チェコはこの手のサーキットではいつも素晴らしい走りをしている」と、市街地コースでのペレスの強さを讃えていた。

 今回のペレスの優勝には、セーフティカー導入のタイミングが有利に働いていたことは事実だ。

 レースを振り返ろう。ポールポジションのシャルル・ルクレール(フェラーリ)に続いて、フェルスタッペンが2番手、ペレスは3番手でレースをスタートした。DRSが使用可能となった直後の3周目のホームストレートでフェルスタッペンがルクレールのスリップストリームに入って、4周目の1コーナーでオーバーテイクし、トップに立つ。その直後には3番手のペレスもルクレールを抜いて、ここでレッドブルが1-2体制を築く。

 ここからレッドブル2台によるチームメイト同士の戦いが始まった。ペレスに1秒以内に迫られたフェルスタッペンは先にピットインを決断する。ピットインしようとしていたタイミングで、ニック・デ・フリース(アルファタウリ)がコース脇に止まってしまうが、レースコントロールは黄旗表示のみでセーフティカーは導入していなかった。そのため、チームはフェルスタッペンを予定通りピットインさせた。その判断をホーナーはこう説明する。

「デ・フリースは壁にぶつかったが、エンジンはまだ動いていて、私たちには彼がそのままギヤをリバースに入れて、すぐに走り出すように見えた」

 しかし、デ・フリースのマシンは左フロントサスペンションが折れ、走行不能の状態だった。そのため、レースコントロールはセーフティカーを導入。すでにピットアウトしたフェルスタッペンにとっては最悪のタイミングとなり、その直後にピットインしたペレスは通常より少ないピットストップロスでピットアウトし、フェルスタッペンを逆転してトップに立った。

 ただし、それだけが勝因ではなかったことは、レース後半のふたりのバトルを見ればわかる。フェルスタッペンが自己ベストを更新すれば、ペレスもすぐさま自己ベストを叩き出して、フェルスタッペンに影を踏ませなかった。

「今日、僕たちは最大限のプッシュをしていた。ふたりとも何度かウォールに接触したし、マックスのプッシュは本当にハードだった。僕のベストレースのひとつになったと思う」

 そのペレスの走りを、フェルスタッペンもこう言って讃えていた。

「レース後半はふたりとも全力でプッシュしていた。コース幅いっぱいを使い、1cm単位で攻めていた。今日のチェコは素晴らしいレースをしていたよ」

 まさにキング・オブ・ザ・ストリートにふさわしいペレスの走りだった。

セルジオ・ペレス&マックス・フェルスタッペン(レッドブル)
2023年F1第4戦アゼルバイジャンGP 優勝セルジオ・ペレス&2位マックス・フェルスタッペン(レッドブル)

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