F1スペインGP技術解説:フェラーリSF-23のアップデート(1)“金魚鉢”型サイドポンツーンとフロアに加えられた変更
2023年F1第8戦スペインGPに、フェラーリが導入したマシンアップグレードを、F1i.comの技術分野を担当するニコラス・カルペンティエルが観察。SF-23の細部の画像を紹介するとともに、デザインの変化とその狙いを分析する。
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■サイドポンツーンの変化
メルセデスがモナコGPで大きなアップデートを投入した1週間後、フェラーリも当初のコンセプトを捨て、レッドブル風に大変身した。より正確には、今季主流となったコンセプトを採用したということだ。
バルセロナに登場したSF-23は、バスタブ状のサイドポンツーン(マラネロでは「金魚鉢」と呼んでいた)が消え、よりオーソドックスな形状になった。ポンツーン上部の窪みや後端での上に向かう傾斜は姿を消し(上画像の黄色矢印参照)、前方から後方へ素直に下っている。
つまりレッドブルやアルピーヌ、アストンマーティン、メルセデスなど2023年のほとんどのF1マシンと同様に、フェラーリのサイドポンツーンは、ディフューザー上部の重要なエリアに気流を下向きに導くコンセプトに方向転換したのだ。さらにアストンマーティンとアルピーヌに(そしてメルセデスにも若干程度)見られる溝も、少し残している。
一方でエンジンカウルの出口は、ほぼ同じ形状を保っている(レッドブルRB19、アストンマーティンAMR23、メルセデスW14“B”のようなキャノン型出口ではない)。つまりモナコで登場したメルセデスのBバージョンと同様、フェラーリも既存のシャシーに異質なコンセプトを組み込んで妥協した、ハイブリッドなデザインに仕上がっている。
■フロアを再設計、ミラーも変更
フロアも大きく再設計された。新しいサイドポンツーンと空力的に調和するための、論理的な変更だ。特に空力エンジニアたちが「リヤコーナー」と呼んで重視するリヤタイヤ前部の領域は、新しいカットアウトやサーフェスで広範囲に作り直されている。(下の画像の各色の矢印、および黄線で示したアンダーボディの端にある非常に長いカットアウト)。またバックミラーの形状もサイドポンツーンの新デザインに合わせ、形状変更されている。
マラネロのシミュレーションによれば、これらの双方的なアップデートによって、特にリヤのダウンフォースが大幅に増加したという。またこれまで手こずっていた高速コーナーでの予測不能な挙動が、大きく改善されることが期待されていた。
しかしSF-23の本質的な弱点は、このアップデートを持ってしても解消されたとは言い難い。そのひとつが操縦性の悪さで、車体性能の総合力が求められるカタルーニャサーキットでは、2人のドライバーの仕事を特に難しくしていた。
現在のF1マシンが最大のダウンフォースを発生させるためには、できるだけ低い車高で走る必要がある。しかしSF-23が地上高を下げると、サスペンションが思うようにボディを安定させられなくなる。足周りは空力プラットフォームを安定的に制御する上で重要な役割を担っているのだが、フェラーリはそこに依然として大きな弱点を抱えているのだ。
(その2に続く)
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