レッドブル&HRC密着:フェアなチームメイトバトルを展開。今季5回目の1-2フィニッシュで開幕12連勝を達成
レッドブル・ホンダRBPTが今シーズン5度目の1-2フィニッシュを飾り、1988年にマクラーレン・ホンダが作った開幕11連勝という記録を更新した。
このレースをレッドブルのガレージで見守っていた吉野誠(HRCチーフメカニック)はレース中、2度緊張感が高まった瞬間があったという。
1回目は17周目。1回目のピットストップを終えた段階で、トップは2番手からスタートして、1周目にポールポジションからスタートしたシャルル・ルクレール(フェラーリ)をオーバーテイクしていたセルジオ・ペレス(レッドブル)だった。
一方、チームメイトのマックス・フェルスタッペンはギヤボックス交換による5番手降格で6番グリッドからスタートし、1回目のピットストップを終えた段階で、ペレスの背後に迫っていた。
2台が1秒以内の差でオー・ルージュを駆け抜けていったとき、レッドブル・ホンダRBPTのスタッフは、レースを見ていた多くの者たち以上に緊張したという。なぜなら、このときレッドブルはふたりにチームオーダーを出すことはしていなかったからだ。
そのことは、ケメル・ストレートエンドのブレーキングでイン側のラインをペレスが守っていたことでもわかる。メルセデスが最強だった時代も、連勝記録が途絶えるのは往々にしてチームメイト同士による接触だった。
しかし、ペレスはフェルスタッペンとのレースを続けながらも、その戦い方は非常にフェアだった。フェルスタッペンがペレスをアウトから抜き去ったのを見て、吉野はひとまず安心した。
しかし、その直後、再び緊張が走る。それは雨だった。じつはベルギーGP開幕前の段階では日曜日は晴れるという予報が出されていたスパ-フランコルシャンだが、土曜日の午後の段階では土曜日同様、降水確率が60%に上がっていた。
スタートの段階では雨が降っていなかったものの、雨雲は近づいていた。しかし、山間部にあるスパ-フランコルシャン・サーキットは雨雲の流れが変わりやすく、雨が降るタイミングと場所が予想しづらい。レースを走っている者のなかには、雨が降ることに賭けて、ピットストップのタイミングを延ばしているドライバーが何人かいた。吉野はそれを恐れていた。
果たして、レース中盤、雨粒がポツリポツリと落ちてくる。トップを走るフェルスタッペンがオー・ルージュを通過してラディヨンの上り坂で挙動を乱したのは、その時だった。
「雨が降っているときは、雨が降っているのはわかるんだけど、どの程度降っているのかはわからないから、いつも探りながら慎重になる。あのときはリヤが滑ってちょっと横向きになったんだ。幸い何事もなかったけれど、雨のオー・ルージュはいつも以上に難しい」(フェルスタッペン)
しかし、その雨はすぐに上がり、雨雲も遠ざかっていくと、吉野のなかにあった不安もクリアされた。
35年前のマクラーレン・ホンダは12戦目のイタリアGPで2台リタイアに終わって、記録が途絶えた。あれから35年、ホンダはレッドブルとともに先人たちが作った偉大な記録を更新した。
クリスチャン・ホーナー代表はこうホンダを称えた。
「アラン・プロストとアイルトン・セナがその年にやってのけたとき、私はひとりのモータースポーツ・ファンとしてテレビでそれを見ていた。私がこの世界に入る時、尊敬する存在がふたつあった。ひとつは最強軍団を作り上げたロン・デニスで、もうひとつがホンダだった。あれから、35年という年月が経ったが、ホンダはいまでも我々のために同じように最高のエンジンを与えてくれている。本当に感謝しているし、自分たちが持つ記録を自分たちで更新したホンダに乾杯したい」
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