【F1チーム代表の現場事情:マクラーレン】表彰台常連チームへとまとめ上げた新リーダー、アンドレア・ステラ
大きな責任を担うF1チーム首脳陣は、さまざまな問題に対処しながら毎レースウイークエンドを過ごしている。チームボスひとりひとりのコメントや行動から、直面している問題や彼のキャラクターを知ることができる。今回は、昨年末にマクラーレンのチーム代表に就任、素晴らしいリーダーシップを発揮し、チームの向上を支えているアンドレア・ステラに焦点を当てた。
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今年、マクラーレンはジェットコースターのようなシーズンを送っている。冬の間にアンドレア・ステラがチーム代表に就任したが、シーズン序盤のマシンは競争力が不足し、チームは非常に苦しんだ。
厳しいシーズンスタートを切るなか、バーレーンで、ステラもCEOザク・ブラウンも、チームが苦境に陥っていることを正直に認めつつ、シーズンを終えるころにはランキング4位まで挽回したいと述べていた。しかし当時は、それが実現する可能性はほとんどないように見えた。
そのころの状況を考えると、それはあまりにも楽観的な目標に思えたが、ステラは技術的な事実に根差した強力なメッセージを発していた。彼は、それ以降の数週間、数カ月にわたりマクラーレンが取るべきプロセス、自分たちのマシンが競争力を身につけるために必要なものについて、理解していたのだ。
ステラは、かつてフェルナンド・アロンソやミハエル・シューマッハーと仕事をした経験を持ち、非常に賢く、技術的な側面に関する知識が豊富な人物だ。そして、数カ月にわたってチーム代表としての彼を観察してきた結果、彼がF1チームをリードするのにふさわしい人物であるとも断言できる。
シンガポール、日本とマクラーレンは勢いを維持した。ランド・ノリスは連続して2位を獲得。さらに印象的だったのは、新人オスカー・ピアストリが鈴鹿で自身初の表彰台に上がったことだ。ふたりは着実にポイントを稼ぎ続け、コンストラクターズランキング4位のアストンマーティンとの差を縮めていった。
ステラは、チームメンバーたちの気を引き締めるため、アストンマーティンを例に挙げ、たとえいま強力なポジションに立っていても、急速にパフォーマンスを失うこともあり得ると述べた。アストンマーティンは、序盤は2番目に速いチームだったが、今は5番目にまで落ちてしまっている。ポイントは獲れる時に獲っておく必要があり、マクラーレンは得意とみられるカタールでは必ず好成績を確保しておく必要があると、ステラは考えていた。
アストンマーティンのフェルナンド・アロンソは、マクラーレンがアストンに追いつけると考えるのは楽観的すぎると示唆した。しかし経験豊富なステラは、F1での戦い方をよく心得ている。マクラーレンは、カタールの金曜予選で上位に値するラップタイムを記録しながら、それをトラックリミットで取り消され、ピアストリは6番手、ノリスは10番手のグリッドに沈んだ。チームが挫折に直面した時、ステラは冷静に対処した。パフォーマンスが高いことは明らかだったため、小さなミスを繰り返さないことだけに集中したのだ。それが土曜のスプリントデーでの好結果につながった。
スプリント・シュートアウトではマックス・フェルスタッペン(レッドブル)がミスをし、ピアストリがグリッド1番手、ノリスが2番手を確保。スプリントではピアストリがトップでチェッカーを受け、ノリスが3位を獲得し、この時点でアストンマーティンとのポイント差をさらに縮めることに成功した。
技術面に強いステラだが、彼を優れたチームリーダーにしている最も重要な要素は、チーム内の人々について深く理解していることだ。カタール決勝では、スタート直後にメルセデスが同士討ちをしたことで、マクラーレンがダブル表彰台を獲得する道が開けた。終盤、2番手をピアストリ、すぐ後ろの3番手をノリスが走行していた際に、ステラはノリスに対し、ピアストリに仕掛けるのをやめるよう指示した。ステラは、ノリスがチームの指示を守る人間だという強い信頼を持って、この判断を下したのだ。
マクラーレンは2位と3位を獲得、レース後、チームオーダーについてもめることもなかった。ステラがドライバーたちを含むチームメンバーたちから尊敬を集めていることは明らかだった。
ステラが常に話しているのは、チームメンバーひとりひとりが高いパフォーマンスを発揮することによって、好結果を出すことができるということだ。デザイナーや技術者たちがファクトリーでマシンの開発を進め、エンジニアやメカニックたちがサーキットでマシンのパフォーマンスを引き出すことに努める。そうしてドライバーは強力な結果を得るためのチャンスを手にするのだ。
メンバーを信じるステラのリーダーシップの下で、マクラーレンの勢いは増しており、彼らがどこまで強さを発揮するのか、非常に楽しみだ。これからマクラーレンとは相性が良くないと思われるサーキットで戦うことになるが、それでも彼らが失速することはないのではないかと思えるほどだ。
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