F1新冷戦。予算制限の上限緩和派と断固反対派……二極化するチーム間対立にF1はどう対応すべきか?

 

 2022年のF1はモナコGPで既に7レースを終了し、第8戦アゼルバイジャンGPを迎えた。今季のマシンは成熟が進められているが、話題となっている予算制限レギュレーションの上限額引き上げに関する問題の解決は見通しすら立っていない。
 世界的なインフレを背景に取り沙汰されることとなったこの予算制限の問題は、チーム間で二極化。レッドブルやフェラーリ、メルセデスといった大規模チームは、インフレによるコスト上昇を鑑み、1億4000万ドル(2022年6月11日のレートで約188億円)とカレンダーが22戦に拡大したことによる追加分である120万ドル(約1億6130万円)という2022年の上限額の緩和を強く求めている。その一方で、上限額の変更に断固反対している。
 予算制限の上限額は1年ごとに500万ドル(約6億7200万円)ずつ段階的に減額されていくモノで、新型コロナウイルスの感染拡大により世界中がロックダウンの真っ只中であった2020年に全チームがレギュレーション導入に合意している。つまり、その後のシーズンがどういったモノになるか、どれだけの収入があるのかなどの見通しが立たない中で決まったことなのだ。
 そこから2年後、2022年シーズンのF1カレンダーは全22戦へと拡大され、サーキットには大観衆が戻ってきた。アメリカを中心にF1人気が高まっていることで、スポンサーもこぞってF1に参入。F1チームの財政は間違いなく、以前よりも健全な状態になったと言える。 
 スポンサーや人気などといった背景があれば、コストが高騰する中でもビッグチームはさらなる収益増加を目指して、大量の資金を投入してマシンを速くしたいと考えるのだろう。手持ち無沙汰になってしまえば、不満を抱くのは当然のことかもしれない。 
 レッドブルのクリスチャン・ホーナー代表はスペインGPの際、予算制限レギュレーションを守るために最後の4レースを欠場しなければならないチームも出てくるかもしれないと示唆していたが、翌戦のモナコGPでは上限超過の見込みを示したに過ぎないと釈明している。 
 インフレにより上昇したコスト分に対して一時的な上限緩和を許可するという解決策は、論理的に納得できる部分もある。しかし、それはどの程度であるべきか、どのように適用されるべきか、そして将来的なコスト上昇に向けてどう対処していくべきか……全ては未解決のままだ。 
 ここで忘れてはならないのが「なぜF1に予算制限が導入されたか」ということだ。 
 いくつかのF1チームとそのオーナーは、ビッグチームが無尽蔵の資金力を投入することができなくなることを前提に、長期的なF1参戦を決断している。予算制限レギュレーションの導入は、F1は富める者がさらに富む世界ではなく、最も効率的に投資を行ない、リソースを有効活用したチームが勝つという構図へと変化していくという合図であった。かつて中団グループにいたチームが、これまでのトップチームに食って掛かるチャンスが生まれてきたのだ。 
 ルノーの取締役会はこの予算制限レギュレーションを前提に傘下ブランドであるアルピーヌのF1計画を推進。アルファロメオF1(母体のザウバー)のオーナーであるイスレロ・インベストメントを率いるフィン・ラウジングやハースF1のオーナーであるジーン・ハースにとっては、ビッグチームと正面から戦えると踏んだからこそ、参戦継続を決断できたのだ。これらのチームが、現在の予算制限上限を維持しようと試みている理由は理解に易い。一度予算上限の緩和を許してしまえば、ふたたび予算の格差が生まれていく。緩和を繰り返しレギュレーションが形骸化してしまえば、以前とは何も変わらない……中団グループにとってはF1参戦の旨みが減ってしまうのだ。
 インフレの影響とその捉え方について、双方の派閥は全く異なる見解を持っている。一方はこの程度のインフレは予測できていたことだと言い、もう一方はロシアのウクライナ侵攻による予期せぬ事態だと言っている。

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