ピアストリ問題を語るアルピーヌCEO。契約上ミスがあったと認めるも「彼はウイリアムズ行きを嫌がるべきでなかった」

 

 アルピーヌのCEOを務めるローラン・ロッシは、オスカー・ピアストリはアルピーヌのレギュラードライバーになる前にウイリアムズで経験を積むというルートを辿ることを嫌がったとして、彼の価値観を受け入れることはできないと語った。ルノー/アルピーヌの育成ドライバーで今年はリザーブドライバーを務めるピアストリは、アルピーヌから2023年にF1デビューを果たす道筋ができたにもかかわらず、マクラーレンへの移籍を選んだ。

 FIA契約承認委員会は、ピアストリとアルピーヌ、マクラーレンの契約問題を審査した結果、ピアストリとアルピーヌは正当な契約関係になく、ピアストリは来シーズン、マクラーレンに移籍することができるという裁定を下した。

 この裁定が発表された後、ピアストリとマネージャーのマーク・ウエーバーは、アルピーヌがピアストリとの契約に対して真摯に取り組まなかったために、マクラーレンと契約するに至ったと主張した。ピアストリ側は、アルピーヌの態度は彼への愛情が欠如していることの表れだったと示唆している。

 一方、アルピーヌ側はピアストリに対して、長くサポートを提供してきたチームへの忠誠心のなさを批判している。ロッシはその主張を繰り返し、ピアストリの価値観に疑問を呈した。

アルピーヌのCEOのローラン・ロッシ
アルピーヌのCEOのローラン・ロッシ

 アルピーヌは、ピアストリをウイリアムズに貸し出し、F1キャリア最初の1、2年をウイリアムズで経験を積ませてから、アルピーヌに戻すというプランを立てていた。これはF1チームが育成ドライバーに対して採るアプローチとして珍しいものではない。しかしロッシによると、ピアストリはそのルートを辿ることを望んでいなかったということだ。結局フェルナンド・アロンソがアストンマーティンへの移籍を決めたため、アルピーヌはピアストリを来季昇格させようとしたが、アルピーヌのプランに疑問を持っていたピアストリはすでにマクラーレンとの契約を結んでいた。

「非常に残念だ。我々は全力を傾けてきた。非常に忠実だったし、多くの投資を行ってきた」と、ロッシは、ピアストリに関する一件について初めて公に話をした際に語ったと、『The Race』は報じた。

「我々は専門的なミス、法務上の専門的なミスをしてしまい、(契約上で)ドアを少し開けたままにしていた。確かに少々の見落としはあったかもしれないが、我々は懸念を抱く必要があるとは決して考えていなかった」

「なぜならあるドライバーに多くのことを与えたら、そのドライバーはかわりにチームのためにドライブするようになるというのがほぼ慣例となっているからだ」

「ジョージ・ラッセルは3年間をウイリアムズで過ごした。ウイリアムズは要領を学ぶ素晴らしい学校のようなものであり、ラッセルはその後、母船に戻った。シャルル・ルクレールは1年間(ザウバーで)同じように過ごした後、フェラーリに戻った。マックス・フェルスタッペンもセバスチャン・ベッテルも同じことをした。このリストは長くなる。多くを投資してくれたチームに戻るのは当たり前のことだ」

「彼(ピアストリ)自身が、ウイリアムズのシートはいらないと言っているのだから、それはそれで単純な話だ。だが何よりもまず、我々はこの態度には賛成できない。なぜならそうすべきではないし、良い態度ではない。だが良い態度というものは普及していないようだ」

■「『愛情を感じられなかった』というのは詭弁」とロッシ

 アルピーヌF1チーム代表のオットマー・サフナウアーは、ピアストリの誠実さについて公然と疑問を呈しており、ロッシも彼の意見に同意している。ロッシはアルピーヌの法務面の甘さを認める一方で、チームが行った投資とコミットメントに対してピアストリが忠実さを示さなかったとして、不満を表した。

「我々は非常に失望したと言っても過言ではない。我々は、彼が我々が行った投資と仕事に忠実でいてくれると期待していた」とロッシは語った。

「我々がミスをしたのは確かだが、価値観を貫いていると感じている。だが彼はそうではなかった。彼はさまざまな選択肢を検討する機会を利用し、より有利な取引をしたのではないだろうか」

「私は、物事が起こるのには理由があると思う。必ずしも同じ価値観を共有しているわけではない。だからおそらくここで袂を分つのが得策なのだろう」

 ロッシは、ピアストリとウエーバーのアルピーヌに対する不満は、新たに見出したマクラーレンとの契約を選んだことを正当化するための「都合のよい言い訳を探す」試みだったと考えている。

2021年F2アブダビ オスカー・ピアストリとマーク・ウエーバー
2021年F2アブダビ オスカー・ピアストリとマーク・ウエーバー

「人々の気をそらすために他のものを指差し、『愛情を感じられなかった』と言う。悪いが私は他のどのチームが傘下ドライバーに与えるよりも、はるかに多くのものを与えている」とロッシは主張した。

「私が話しているのは物理的な愛情であって、背中をたたいて褒めるようなことではない。あらゆるドライバーが受け取りたいと思う種類の愛情だ。(アルピーヌが行ったことを)すべて行ったら、愛情がないなどとは言えない。そして『書類やなにかが適切なタイミングで送られてこなかった』と言うのなら、それは言い訳にすぎない」

「少し想像してみよう。我々の契約書とマクラーレンの契約書を彼の前に置いてみる。彼はどちらの契約書を取るだろうか? マイルストーンや期限の問題はない。問題は、彼が明らかにマクラーレンに行きたがっていたということなのだ」

「彼はより魅力的なオファーを受け取ったからだと私は考えているが、それが競技面のことだとは思わない。なぜならそれに関しては非常によく似た提案だからだ。我々のオファーの方が良いものだと主張してもいい。なぜなら我々はワークスチームであり、彼はここでトレーニングを受け、チームの全員のことを知っている。従って、おそらくより良い環境だろう。だが、何か別の基準、異なる単位で測られる愛があるのだとしか思えない」

「それも人生だ。だがこれは良い前例にはならないと考えている。明らかに彼は他の非常に優れたドライバーたちとは一線を画している。彼より前の優れたドライバーたちは全員同じプロセスを経てきたのだ」

「彼は彼らよりも優れているかもしれない。非常に素晴らしいチャンピオンたちがたくさんいるが、彼はそうした者たちのなかでも最も優れているのかもしれない。だがたとえ彼がそうであっても、我々は同じ価値観を共有していない。そういうことだよ。我々は価値観を共有していないんだ」

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