【角田裕毅を海外F1ライターが斬る:第19/20戦】僚友とは対照的に落ち着きが出てきた。重要な来季に向けさらに成長を
2022年、アルファタウリの角田裕毅は、F1での2シーズン目を戦っている。昨年に続き、エディ・エディントン氏が、グランプリウイークエンドを通して角田の動きをくまなくチェックし、豊富な経験をもとに、彼の成長ぶり、あるいはどこに課題があるのかを忌憚なく指摘する。今回は2022年F1第19戦アメリカGP、第20戦メキシコGPについて振り返ってもらった。
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まだ今年のシーズンが終わっていなかったというのは本当か? いったい何レースあるのだ。え、「まだたったの20戦しかやってない」だって? 「たったの」ではないと思うぞ。20戦でも十分多すぎる。そのうえ、まだあと2戦あると? こんなスケジュールに適応しなければならないとは、今のドライバーたちは本当に気の毒だ。
実際、この長く過酷なシーズンにうまく対応できないドライバーもなかにはいるようだ。無理もない。たとえば最近でいうと、アジアで2連戦をこなし、通常とは異なる時間帯に活動し、睡眠や身体のバランスが崩れたままでアメリカに飛んで、また2連戦だ。アメリカではマーケティング面の要求も、ファンからの要求も高い。F1ドライバーたちは、通常トップアスリートが必要とする休息の半分も取れずにいるはずだ。
最近のピエール・ガスリーを見ると、ある程度の経験を積んだ彼でも、この容赦ないスケジュールに疲弊して、心が折れかけているように思える。メキシコでペナルティを受けた件は、どれほど才能のあるドライバーであっても、燃え尽きてしまったときには、こんなことが起こるのか、と思い知らされる出来事だった。
私がF1業界で現役だったころは、レース中、相手のドライバーをコース外に押し出して、自分もコース外を走ってオーバーテイクしたとしても、誰も問題視しなかった。レース後に相手が文句を言いに来て、殴りかかってくるかもしれないが、それでおしまい。ペナルティが出ることはなかった。
だが今は、政治的にすべてに正しさが求められ、あらゆることをクリーンに扱わなければならない。現在のF1では、あの時、ガスリーがターン4でストロールを押し出した後、ポジションを戻さなければならなかったことは、私のような年寄りでもすぐ分かった。ところがガスリーはそのまま前を走り続けて、結局ペナルティを受けた。そして、「FIAはあの時、ポジションを戻すように言わなかったじゃないか」と憤ったのだ……。
一方、ガレージのこっち側の角田裕毅は、アンガーマネジメント講習が役立っているようで(受けているのかどうか、本当は知らないのだが)、最近非常に冷静だ。2023年の契約を結び、母国グランプリで大きな声援を受けて、日本のモータースポーツにおける自分の役割を自覚した彼は、大きく成長したように見える。
オースティンは難しいトラックで、ほんの小さなミスで大きくタイムを失う。だが予選で角田は経験あるガスリーと互角に渡り合った。トラックリミット違反でタイムが取り消されていなければ、ガスリーより上位だったのだ。決勝で角田はミスなく走り、ハースと熾烈なランキング8位争いをしているチームのために、貴重なポイントを持ち帰った。
一方でガスリーは、セーフティカー出動時に前のマシンとの距離を開けすぎたことでペナルティを受け、さらにチームのミスでこのペナルティをちゃんとこなさなかったことにより、ふたつ目のペナルティが出た。おかげでガスリーは角田をオコンからガードする役割を果たす羽目になった。
メキシコで角田は予選でガスリーに勝ち、13番グリッドに。ポイント獲得の可能性は十分あったのだが、残念ながらダニエル・リカルドに突き飛ばされて、リタイアしなければならなかった。完走していたら、10位は確実だっただろう。ガスリーの方は、冒頭で触れたストロールとのインシデントでペナルティを受けてしまった。つまり、本来なら2戦連続で角田はチームメイトに勝っていたはずだった。
今の角田の状態は、2023年に非常に役立つことだろう。来年のチームメイトは、知的で、要領がよく、非常に成熟したドライバーのニック・デ・フリースだ。彼に匹敵するパフォーマンスを見せるためには、角田はできるだけ早く成長する必要がある。
2023年に角田は大きなプレッシャーに立ち向かわなければならない。2024年のF1昇格を目指すデニス・ハウガーや岩佐歩夢たちからシートを守るためには、良いパフォーマンスを発揮する必要があるからだ。非常に難しく、大事な一年になるだろう。こういう難しい状況にどう対応していくか。それについて経験豊かな人間からのアドバイスを受けると役立つはずだ。何度も言うように、私が要求する報酬は実はそれほど高額ではないので、よければ検討を……。
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筆者エディ・エディントンについて
エディ・エディントン(仮名)は、ドライバーからチームオーナーに転向、その後、ドライバーマネージメント業務(他チームに押し込んでライバルからも手数料を取ることもしばしばあり)、テレビコメンテーター、スポンサーシップ業務、講演活動など、ありとあらゆる仕事に携わった。そのため彼はパドックにいる全員を知っており、パドックで働く人々もエディのことを知っている。
ただ、互いの認識は大きく異なっている。エディは、過去に会ったことがある誰かが成功を収めれば、それがすれ違った程度の人間であっても、その成功は自分のおかげであると思っている。皆が自分に大きな恩義があるというわけだ。だが人々はそんな風には考えてはいない。彼らのなかでエディは、昔貸した金をいまだに返さない男として記憶されているのだ。
しかしどういうわけか、エディを心から憎んでいる者はいない。態度が大きく、何か言った次の瞬間には反対のことを言う。とんでもない噂を広めたと思えば、自分が発信源であることを忘れて、すぐさまそれを全否定するような人間なのだが。
ある意味、彼は現代F1に向けて過去から放たれた爆風であり、1980年代、1990年代に引き戻すような存在だ。借金で借金を返し、契約はそれが書かれた紙ほどの価値もなく、値打ちがあるのはバーニーの握手だけ、そういう時代を生きた男なのである。
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