F1史上初の巡回展『F1 Exhibition』がスペインでスタート。バーレーンで炎上したグロージャンのシャシーを展示

 

 2023年3月24日より、F1史上初の巡回展『F1 Exhibition』がスペインのマドリードで始まる。ハースF1チームと、画期的で臨場感あふれる同展のプロデューサーたちが協力し、2020年F1第15戦バーレーンGPのオープニングラップで激しいクラッシュに見舞われて炎上し焼け焦げた『VF-20』のシャシーが一般公開されることになった。

 当時ハースに所属していたロマン・グロージャンは、人が耐えられるなかでも最も恐ろしい出来事のひとつを経験した。ガードレールの後ろで炎が上がるなか、窮屈なコクピットからなんとか脱出したのだ。マシンがバリアを突き破るという大きな衝撃をグロージャンが生き延びたこと自体が奇跡であり、F1マシンの安全性が証明された。

 しかし炎から抜け出すには、勇敢なグロージャンの超人的な努力と、おそらくは天の加護が必要だっただろう。グロージャンがF1のセーフティクルーの助けを得て車体から離れると、ハースのシャシーの炎は消し止められた。煙を上げるシャシーの残骸は、起きる可能性のあった恐ろしい出来事を思い起こさせた。

ロマン・グロージャン(ハース)
2020年F1第15戦バーレーンGP 炎上したマシンから脱出し、救急車に乗るロマン・グロージャン(ハース)
2020年F1第15戦バーレーンGP ロマン・グロージャン(ハース)のマシンは真っ二つになり、モノコックはガードレールに突き刺さって炎上した
2020年F1第15戦バーレーンGP ロマン・グロージャン(ハース)のマシンは真っ二つになり、モノコックはガードレールに突き刺さって炎上した

 同展には6つのメインルームがある。それぞれの部屋で特別に用意されたショーが行われ、F1のストーリーについてユニークな見世物を提供する。『サバイバル』と名付けられた専用の7部屋目にはハースのシャシーが展示され、これまで公開されなかったクラッシュの映像が映し出される大規模なビデオ・インスタレーションが行われる予定だ。

 火曜日に『F1 Exhibition』のプロモーターが公開した短編映像では、グロージャンが劇的なクラッシュと恐ろしい死から逃れたことを振り返っている。

「僕にしてみればあれは大きな事故だったが、外部から見てどれだけの影響や激しさがあったのか自分では気づいていなかった」とグロージャンは回想した。

「どういうことが起きたのか見せてもらったのは次の日のことで、そこでようやく気づいたんだ。僕の妻は、子どもたちと僕の父と一緒に実際にレースを観ていた。彼らはあの瞬間を一生覚えているだろう。彼らは何かの知らせを待っている観客でしかなかった……バーレーンで何かがわかるのを待っていた」

「ヘルメットを打ち付けてヘッドレストを壊さなければならなかった。そうしてヘルメットを被ってシートに立ち上がることができた。左足がシャシーに挟まっているのに気づいて、できるだけ強く引っ張った。シューズはシャシーに残ったままだったが、足のところに隙間ができたので、クルマから降りることができた」

「120キロの燃料とバッテリーが積んであったが、両方とも燃えていた。メディカルカーのイアン・ロバーツ博士とアラン(・ファン・デル・メルバ)、そして消防士のひとりが、炎を退けて僕が出るのを手伝ってくれた。そのおかげで、少なくとも僕はどちらへ進むべきか、出口がどこなのか見ることができたんだ」

「大きな衝撃を受けたときのためにサバイバルセルがある。僕はセルのなかで無傷だった。シャシーはまだ形を留めていて、ヘイローもあった。ダメージと焼けたことは別として、あとのものは本来あるべき姿のままだった。そのことが僕の命を救ってくれたのだと思う」

『F1 Exhibition』での展示は、現代F1の安全性の証であると同時に、このスポーツの安全性を向上させるために多大な犠牲を払った人々に敬意を表するものでもある。グランプリレース史上初の『F1エキシビジョン』は、3月24日にIFEMAマドリードで始まる。

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