F1技術解説:サウジアラビアGP(1)レッドブルが導入したビームウイングと、明らかになったトランスミッションへの不安

 

 2023年F1第2戦サウジアラビアGPで各チームが走らせたマシンを、F1i.comの技術分野を担当するニコラス・カルペンティエルが観察し、印象に残った点などについて解説。第1回では、圧倒的速さを示すレッドブルRB19の弱点に焦点を当てた。

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 開幕2戦を終えて、レッドブルの優位は確かなものとなった。それはどこから来るのか? そしてレッドブルに次ぐベストマシンはアストンマーティンか、フェラーリなのか。それとも?

 レッドブルRB19の戦闘力はライバルたちを大きく引き離しており、マックス・フェルスタッペンも「タイトル争いはわれわれ二人の間で演じられる」と、早くも言っている。実際、開幕2戦で2回のポールポジションと2回のワンツーフィニッシュを獲得し、アストンマーティンとメルセデスに49ポイント、フェラーリには61ポイントの差をつけている。ライバルたちがあり得ないような進化を遂げない限り、レッドブルに追いつくのは難しいと考えるべきだろう。

 超高速の第2戦ジェッダ市街地サーキットでは、できるだけ空気抵抗を少なくする必要がある。そのためレッドブルはライバル同様、開幕戦バーレーンよりも角度の少ないウイングを搭載。さらにドラッグを減らすため、シングルエレメントのビームウイングも投入した(下写真の黄色矢印)。一方ライバルたちは、2枚目のフラップを改良しただけだった。

レッドブルRB19のビームウイング比較
レッドブルRB19のビームウイング比較

 RB19は昨年型のRB18同様、フロア下で十分なダウンフォースを発生することで、大きなリヤウイングが不要だ。そのおかげで、より高いトップスピードを実現している。

■レースをリードしながら、信頼性に懸念を示したペレス

 しかしRB19は速い一方で、壊れやすい。2レースともライバルを大きく引き離して勝利したが、薄氷の完走だった。トラブルが顕在化したサウジアラビア以前、すでにバーレーンの決勝レースで、エンジニアたちは二人のドライバーにスロットルを緩めるよう指示を出していた。

「バーレーンでは幸運にも大きなリードがあった」とセルジオ・ペレスは振り返る。「もし最後までプッシュしなければならなかったら、おそらく完走できなかった。信頼性に関する問題が、少なからずあるということだ」

 レッドブルのアキレス腱はトランスミッションである。サウジアラビアでは金曜日の朝にペレスのマシンに、そして翌日にはフェルスタッペンのマシンに新しいギヤボックスが載せられた。それにもかかわらずフェルスタッペンはQ2でドライブシャフトのトラブルに見舞われ、メカニックたちはバーレーンで使用したギヤボックスを取り付け直さなければならなかった。さらに決勝レースでも、二人は終盤にマシンのリヤから振動を聞いている。

 そのためペレスは担当エンジニアのヒュー・バードに、「なぜ僕とマックスは最後まで、無意味にプッシュしないといけないんだ」と、訊いている。いうまでもなく信頼性の不安を理由に、フェルスタッペンにペースダウンを求めたのだった。

 フェルスタッペンはチームの指示を無視して攻め続けたが、ペレスとの差をコンマ9秒縮めるのに12周を要し、最終的に2位に甘んじた。

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