【F1第15戦無線レビュー(1)】首位争いを繰り広げるフェルスタッペンとサインツ「あれは悪ガキだね」

 

 2023年F1第15戦イタリアGP。フェラーリの母国レースでカルロス・サインツがポールポジション、シャルル・ルクレールが3番グリッドと、フェラーリにとっては好結果を持ち帰るための絶好のチャンスとなった。しかしレースのスタートは角田裕毅のマシントラブルにより一度中断となり、波乱の幕開けを迎えた。イタリアGP前半を無線とともに振り返る

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 スタート直前のフォーメーションラップ。

シャルル・ルクレール:右コーナーで、クルマがうまく曲がらないんだけど。何か、おかしくない?
シャビエル・マルコス・パドロス:データ上はすべてOKだ

 最終コーナー手前、グリッドにつく直前に、角田裕毅(アルファタウリ)が止まってしまう。

角田:エンジントラブルだ

 角田は2021年のイタリアGPも、ブレーキトラブルでスタートできず。去年は14位完走でノーポイント。モンツァは鬼門のようだ。

ジャンピエロ・ランビアーゼ(→マックス・フェルスタッペン):スタート中止だ。エンジンスイッチオフ。5分後再開予定だ

 しかし角田のマシンが、なかなか撤去できない。

セルジオ・ペレス:何やってるんだ。なぜ撤去できない?
ヒュー・バード:ギヤがスタックしてるんだと思う

 急いでマシン整備に向かおうとするメカニックたちで、ピットからコースに向かう入り口は大渋滞となった。

マルコス・パドロス:なかなかコースに入れない。もう少し待ってくれ
ルクレール:素晴らしい! (少しして)ああ、やっと来てくれたね。ローマから歩いてきたのかと思ったよ!

ランビアーゼ(→フェルスタッペン):スタート手順に変わりはない。(ピットイン)ターゲットは12〜15周だ。それ以上は左リヤに厳しすぎる。

 路面温度が42度を超え、タイヤをいかに持たせるかがカギになった決勝レース。マックス・フェルスタッペン(レッドブル)の担当エンジニアのジャンピエロ・ランビアーゼは「左リヤのデグラデーションを考えると、15周が限界」と伝えていた。しかし実際には、フェルスタッペンは20周まで引っ張った。周回数が2周短縮され、何よりフェルスタッペンが首位のカルロス・サインツ(フェラーリ)を無理に抜こうとせず、タイヤマネージメントに専念したことが大きかった。

 ポールシッターのサインツがホールショットを決め、2番手フェルスタッペンを引き離しにかかった。

リカルド・アダミ(→サインツ):1秒以上のリードを築くんだ

カルロス・サインツ(フェラーリ)
2023年F1第15戦イタリアGP カルロス・サインツ(フェラーリ)

 しかしペースに勝るフェルスタッペンはすぐに追いつき、4周目のターン1のブレーキングで仕掛ける。サインツは一歩も譲らず、フェルスタッペンが不平を漏らす。

フェルスタッペン:あれはちょっと、悪ガキ(のやり方)だったね

 対するフェラーリ陣営は当然、その行為を賞賛した。

アダミ(→サインツ):グッジョブだ

 背後ではジョージ・ラッセル(メルセデス)とセルジオ・ペレス(レッドブル)が、熾烈な4番手争いを繰り広げていた。

9周目
マーカス・ダドリー:ターン6で、もっとタイヤをいたわるんだ
ラッセル:そっちからは見えてないかもしれないけど、(ペレスに)後ろにすぐくっつかれてるんだよ

 しかしペレスも、なかなかラッセルを抜けない。

 10周目前後、サインツを抜きあぐねるフェルスタッペンに、エンジンパワーを上げる指示が出た。

ランビアーゼ:モード8、モード8にするんだ
フェルスタッペン:向こうは最高速がすごいね

 レッドブル陣営はタイヤの持ちを考えて、ダウンフォースをつけ気味のセッティングにしていた。一方のフェラーリは、かなり薄いリヤウイング。それも最高速の違いに影響していたようだ。しかしランビアーゼは、あくまで冷静だ。

ランビアーゼ:サインツは、リヤタイヤに苦しんでる

13周目
ラッセル:アンダーカットが、すごく効果的なんじゃない?

 しかしラッセルは、19周目までピットインせず。20周目に入った3番手のルクレール、21周目の背後のペレスに、共に先行されてしまった。

 15周目、ついにフェルスタッペンがサインツを抜いてトップに立った。

16周目
ランド・ノリス:僕の方が全然速い。オスカーはもっとペース上げてくれないかな
ホセ・ガルシア:わかった、ランド。見てみよう

 この時点でノリスは、6番手オスカー・ピアストリ(マクラーレン)の1秒以内まで迫っていた。できれば前に出たいノリス。だがチームは順位の交代を指示することなく、両者は1秒以内のまま周回を重ねた。

オスカー・ピアストリ(マクラーレン)
2023年F1第15戦イタリアGP オスカー・ピアストリ(マクラーレン)

 2番手のサインツを1秒以内で追うルクレールも、同じような訴えをしていた。

18周目
ルクレール:カルロスはリヤがちょっと苦しそうだ
パドロス:了解だ

 そしてこちらは、すぐにサインツがピットイン。ルクレールも次周に続く。サインツのピット作業はルクレールより1秒遅かったが、ターン1でわずかに先行。ルクレールは、2番手を奪うことはできなかった。これがレース終盤の、フェラーリドライバー同士の圧巻バトルの伏線となった。
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(後半に続く)

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