【F1チーム代表の現場事情:レッドブル】順風満帆。最強時代を取り戻しつつあるホーナーの余裕
大きな責任を担うF1チーム首脳陣は、さまざまな問題に対処しながら毎レースウイークエンドを過ごしている。チームボスひとりひとりのコメントや行動から、直面している問題や彼のキャラクターを知ることができる。今回は、レッドブル・レーシングの代表クリスチャン・ホーナーに注目した。
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クリスチャン・ホーナーにとって、今、すべてがこれ以上ないほどうまくいっている。
カナダGPでレッドブルは6連勝を飾り、今シーズンがその歴史のなかで最強の一年となる可能性がますます高まってきている。ここまでの9戦で勝利は難しいと思われたのは、フェラーリのシャルル・ルクレールが圧勝したオーストラリアGPだけだ。4年連続となるダブルチャンピオンを獲得したころの強さを思い出す。V8時代が終わる2013年は19戦中13勝を挙げ、シーズン後半には9連勝を達成した。
レッドブルはその後、メルセデスの後塵を拝し続けたが、昨年ようやくドライバーズチャンピオンを手にすることができた。そして、技術レギュレーションが大きく変更された今年も、レッドブルは昨年の勢いを維持することに成功した。ライバルのフェラーリは予想されたほど順調ではなく、メルセデスは優勝争いに絡むことすらできない状態に陥っている。
ホーナーにとってさらに喜ばしいのは、ドライバーラインアップをようやく安定させることができたことだろう。今のところ、マックス・フェルスタッペンだけでなくセルジオ・ペレスもタイトルを狙える位置におり、その好調さから、2年の契約延長を決断することができた。つまりホーナーは、当面、ドライバー選択に関して悩む必要がないわけだ。
2018年末にダニエル・リカルドが去って以来、フェルスタッペンのチームメイトに誰を起用するのか、ホーナーは常に頭を悩ませていた。ピエール・ガスリーもアレクサンダー・アルボンも、期待どおりの結果を出してはくれなかったのだ。しかし2021年にペレスを起用し、今回2024年末までの契約を結んだことで、レッドブルはようやく安定したベースを手に入れることができた。
アゼルバイジャンGPでレッドブルは今年ここまでで3度目の1-2を飾った。2021年には1-2を達成したチームはマクラーレンのみで、しかもイタリアGPの1回だけということを考えると、今年のレッドブルの成績がずば抜けていることは明らかだ。もちろん、スペインとアゼルバイジャンでは、トラブルによってルクレールがリタイアしたおかげで、レッドブルが優勝と2位を手に入れたにすぎないが、現在、レッドブルと立場が逆転する形でフェラーリが信頼性の問題に苦しんでいることも、ホーナーとチームを楽にしている。
今年強力なマシンを作ることができたレッドブルとは異なり、メルセデスは苦境に陥っている。ホーナーは、昨年のライバルがもがき苦しむ様子を余裕を持って眺めているようだ。
カナダGP前に、FIAは、安全上の理由から、ポーパシングの影響を軽減するために介入することを決め、チームに対して技術指令書を発行した。このFIAの動きに対して不満を抱いているチーム関係者は多い。たとえば、ポーパシングの影響をさほど受けていないチームは、問題解決に苦労しているチームのためにFIAが全チームに何かを強制しようとするのはおかしいと主張している。
メルセデスのチーム代表トト・ウォルフはそういった他チームの姿勢が気に入らず、カナダの土曜朝に行われたチーム代表会議において、感情的になって他のチームボスたちを批判した。ドライバーにポーパシングの影響について本音を言わないよう強制しているチームもあるのだ、とウォルフは言い立てた。
そういうウォルフの様子をホーナーは、芝居がかっていると揶揄した。初めてNetflixのカメラが入ったカナダでのチーム代表会議でのウォルフについて、「ルイス(・ハミルトン)の映画に出るためのオーディションを受けていたんじゃないか」と言って、ホーナーは笑っていた。
レッドブルは、今の勢いに乗って、チームのホームグランプリである次戦イギリスGPで今年こそ勝利をつかみたいと考えている。先日発表されたレッドブルのハイパーカープロジェクトに、今後エイドリアン・ニューウェイは焦点を移していくことになるだろうが、今のところチームは順風満帆だ。
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