フェラーリF1-75が勝てなくなった3つの理由(2):レッドブルが驚異的進化を達成
フェラーリが前回優勝したのは、7月のオーストリアGPのことであり、その後の5レースで、勝ち星から見放されている。シーズン当初のあの目を見張るようなF1-75の速さは、いったいどこに行ってしまったのか。フェラーリの失速をF1i.comのニコラス・カルペンティエルが技術的な面から分析、3つの理由を挙げた(全3回連載)。第1回「フェラーリF1-75が勝てなくなった3つの理由:開発の方向性の間違い」 に続く今回は、レッドブルのシーズン中の驚異的な進化について説明する。
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■新規定への理解において一枚上手だったレッドブル
フェラーリがダウンフォースを何が何でも増やすことを最優先したのに対し、レッドブルはマシン性能が発揮されるウィンドウを可能な限り広げようとした。ミルトン・キーンズは、マラネロのように何種類ものリヤウイングを作ることに予算を使うのではなく(ちなみに今季ここまで、フェラーリはレッドブルのほぼ倍の仕様を投入している)、フロア形状の微調整に専念した。アゼルバイジャン、オーストリア、フランスと改良を重ねて、コーナーでのダウンフォースをより一定にすることで、ドライバーに自信を与え、タイヤの劣化を抑えるという2つの効果を狙ったのだ。
その結果、RB18は、オールマイティなマシンになった。空力効率の高さが必要とされるスパやバクーを得意とするのはもちろんだが、シーズン当初はむしろ不得意だったハイダウンフォースのブダペストやザントフォールトでも、競争力を発揮するようになった。
今季大きく変わった車体規約の影響で、2022年のF1マシンはいずれもこれまでよりオペレーションウィンドウ(本来のマシン性能が最も発揮される領域)が狭くなっている。これはサスペンションが硬い、空力的余裕がないなどの理由から来るものだ。
なので今季のマシン開発で最も重要だったのは、このオペレーションウィンドウの幅をできるだけ広くすることだった。レッドブルのチーフテクニカルオフィサーのエイドリアン・ニューウェイは、さすがにその重要性を十分に理解し、開発総責任者でありながら、RB18のサスペンションを自ら設計した。
現状では、予選は依然としてフェラーリの方が少し速い。しかしレースでは、タイヤと重量変化にうまく対応できているレッドブルに軍配が上がる。2022年のF1マシンは以前より先行車の乱気流の影響を受けにくくなっているため、予選よりレースを優先するマシン作りは適切な選択と言える。レッドブルの方がフェラーリよりも、新しく導入された原理原則をよく理解しているということだ。
■減量に成功したRB18でフェルスタッペンが無敵に
さらにレッドブルはシーズンを通じて、余分なマシン重量を大幅に減らすことにも成功した。開幕当初のRB18は最低重量を少なくとも10kg以上超過していた(F1-75は5kg)。それが現在では、2kgから5kgの超過にとどまっている。これはコースにもよるが、ラップタイム換算でコンマ1秒から2秒の改善となる。マックス・フェルスタッペンがイタリアで指摘したように、この減量プログラムが特にマシンの重要な部分を対象としたことを考えれば、このメリットはより大きなものといえるだろう。
「(開幕当初は)最低重量をはるかに超えていただけでなく、余分な重量が間違った場所に配置されていたんだ。具体的にはフロントに重量がかかりすぎて、アンダーステアになり、簡単にホイールがロックしてしまっていた」
このダイエットの成功でRB18はさらにコンマ数秒を稼ぎ出し、フェルスタッペンの好むような重量配分の恩恵により(残念ながらセルジオ・ペレス好みではないが……)、より早くコーナーに進入することができるようになった。この新しい車体バランスによって、フェルスタッペンはほぼ無敵になったと言える。
現時点のRB18は、強大なダウンフォースを発生すると同時に、空気抵抗が少ないという、空力的に鬼に金棒のマシンになっている。典型的だったのが超高速コースのモンツァで、RB18のリヤウイングはF1-75よりもずっと大きな角度で立っていたにもかかわらず、ストレートでフェラーリと同程度の速さを見せたのだ。
なぜそんなことが、可能なのか? GPSのデータでは、既存4メーカーのパワーユニットは、ほぼ同じパワーを発揮している(ただし『Auto Motor und Sport』は、ホンダ製V6エンジンはフェラーリエンジンよりも5馬力ほど高いと試算している)。なのでこの優位性は、かならずしもホンダ製パワーユニットのおかげではない。
あくまでF1パドックの噂だが、ニューウェイは最高速区間でリヤエンドを失速させる方法を見出したといわれている。つまりリヤウイングとフロア下を流れる気流を分離させ、ダウンフォースを一時的に減少させて直線スピードに有利な状態にしているとのことだ。
(第3回に続く)
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