【全ドライバー独自採点/F1日本GP】新王者フェルスタッペンがウエットで別次元の速さ。冷静でなかったガスリー

 

 長年F1を取材しているベテランジャーナリスト、ルイス・バスコンセロス氏が、全20人のドライバーのグランプリウイークエンドの戦いを詳細にチェック、独自の視点でそれぞれを10段階で評価する。今回は日本GPでの戦いぶりを振り返る。

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■評価 10/10:難コンディションで驚異的な速さを発揮。勝利でタイトルを決めたフェルスタッペン

マックス・フェルスタッペン(レッドブル):予選1番手/決勝1位
エステバン・オコン(アルピーヌ):予選5番手/決勝4位

 マックス・フェルスタッペン(レッドブル)の2022年ドライバーズタイトル確定の瞬間は、レギュレーションの解釈の問題でいささか混乱したが、彼自身の日本GPでのパフォーマンスは圧倒的だった。ポールポジションからスタートし、直後にリードを失いかけたものの、ターン1への大胆なレイトブレーキングでリカバーした。レース再開の際、彼のリスタートのタイミングは完璧で、その後は後続よりも1秒以上速いラップタイムで周回を重ね、見事な勝利を収めた。

 今回フェルスタッペンと同レベルのパフォーマンスを発揮したのはエステバン・オコン(アルピーヌ)だけだった。今シーズン、期待外れのレースが何度かあったオコンだが、今回は今年ここまででベストの戦いをした。予選ではレッドブルとフェラーリのすぐ下につけ、決勝ではカルロス・サインツがすぐにコースオフしたためひとつ繰り上がり、そのポジションを最後まで維持した。速さで勝ったルイス・ハミルトンのメルセデスが終始すぐ後ろに迫る状況で、オコンは難コンディションにもかかわらず一度もミスをしなかった。

2022年F1第18戦日本GP マックス・フェルスタッペン(レッドブル)が優勝でドライバーズタイトルを獲得
2022年F1第18戦日本GP マックス・フェルスタッペン(レッドブル)が優勝でドライバーズタイトルを獲得

2022年F1第18戦日本GP エステバン・オコン(アルピーヌ)
2022年F1第18戦日本GP エステバン・オコン(アルピーヌ)

■評価 9/10:ベッテルが最後の鈴鹿で今季ベストのパフォーマンス

ルイス・ハミルトン(メルセデス):予選6番手/決勝5位
セバスチャン・ベッテル(アストンマーティン):予選9番手/決勝6位

 ルイス・ハミルトン(メルセデス)のマシンはトップスピードが低く、そのせいで最後までオコンを抜くことができなかった。だがハミルトンは日本GPを含む過去5戦の予選ですべてチームメイトに勝っており、今回も7度のワールドチャンピオンとしての実力を見せつけた。

 セバスチャン・ベッテル(アストンマーティン)は彼にとって最後の鈴鹿で、予選でも決勝でも今季ベストのパフォーマンスを披露した。チームメイトがQ1で敗退したにもかかわらず、ベッテルはQ3に進出。決勝ではターン1での接触で16番手まで落ちたが、レース再開直後にインターミディエイトに交換するという大胆な判断が功を奏し、ポジションを上げることに成功。終盤、新しいタイヤを履いたフェルナンド・アロンソを古いタイヤで抑え切って6位を手にした。

2022年F1第18戦日本GP セバスチャン・ベッテル(アストンマーティン)
2022年F1第18戦日本GP セバスチャン・ベッテル(アストンマーティン)

■評価 8/10:レース終盤の追い上げが素晴らしかったアロンソ

フェルナンド・アロンソ(アルピーヌ):予選7番手/決勝7位

 フェルナンド・アロンソ(アルピーヌ)は予選でいつもほどの速さがなく、オコンに敗れた。決勝では長時間にわたってベッテルにプレッシャーをかけ続け、終盤タイヤ交換を行うという判断により10番手に後退。その戦略を嘆きながらも、最後の5周に目覚ましい挽回を見せた。あと1コーナーあれば、ベッテルを抜いていただろう。

フェルナンド・アロンソ(アルピーヌ)
2022年F1第18戦日本GP フェルナンド・アロンソ(アルピーヌ)

■評価 7/10:健闘実らずフェルスタッペンに届かなかったルクレール

シャルル・ルクレール(フェラーリ):予選2番手/決勝3位
セルジオ・ペレス(レッドブル):予選4番手/決勝2位
ジョージ・ラッセル(メルセデス):予選8番手/決勝8位
ニコラス・ラティフィ(ウイリアムズ):予選20番手/決勝9位

 シャルル・ルクレール(フェラーリ)は、予選でフェルスタッペンとカルロス・サインツとの激しい戦いの後、ポールポジションには僅差で届かなかったが、今回もチームメイトより速かった。決勝ではフェルスタッペンより良いスタートを切りながらも、ターン1のイン側のラインでグリップを得られず、2番手にとどまることになった。タイヤの摩耗が激しく、チームには新品タイヤに交換するというギャンブルをする意志もなかった。そのため、セルジオ・ペレスからの強いプレッシャーに耐え続けなければならず、それが最終コーナーでのミスにつながり、タイムペナルティを受けて3位に降格された。

 シンガポールGPのウイナー、セルジオ・ペレス(レッドブル)は、鈴鹿の週末では勝利を狙える状況に一度も自分を持っていくことができなかった。予選では上位勢から0.4秒遅い4番手。レース中断の時点で3番手を走っており、その位置のままフィニッシュしたが、ルクレールのペナルティで2位に繰り上がった。

 ジョージ・ラッセル(メルセデス)は予選で今回もハミルトンにかなわなかったばかりか、アルピーヌの2台にも負けてしまった。さらに、決勝ではインターミディエイトタイヤに交換する際にチームがハミルトンと同じ周回にラッセルをピットインさせたために4秒ロス、さらにアウトラップで大きくタイムを失ったことで、14番手に落ちた。そこから挽回していくなかでS字で見せたオーバーテイクがラッセルにとってこの週末のハイライトだった。本来6位でフィニッシュできただろうが、そこからふたつ下の8位という結果だった。

 好青年ニコラス・ラティフィ(ウイリアムズ)にようやく良い点数をつけることができて、心からうれしい。予選パフォーマンスは今回も振るわなかったが、ドライコンディションよりも、ウエットの難しいコンディションでの方が良い走りを見せた。決勝でリスタート時のセーフティカーがピットに戻った瞬間にインターミディエイトに交換するという戦略により、トップ10圏内に浮上、アロンソとラッセルには抜かれたものの、ラティフィは9位でシーズン初入賞を果たし、2ポイントを獲得した。

2022年F1第18戦日本GP シャルル・ルクレール(フェラーリ)
2022年F1第18戦日本GP シャルル・ルクレール(フェラーリ)

■評価 6/10:僚友より速かったが、マシンの競争力不足に悩まされた角田裕毅

ランド・ノリス(マクラーレン):予選10番手/決勝10位
ダニエル・リカルド(マクラーレン):予選11番手/決勝11位
バルテリ・ボッタス(アルファロメオ):予選12番手/決勝15位
角田裕毅(アルファタウリ):予選13番手/決勝13位

 今回のランド・ノリス(マクラーレン)には、普段の優れたパフォーマンスは見られなかった。予選で何度かミスをした結果、10番手に終わり、得意のはずの複雑なコンディションで速さがなく、ポジションを上げることができずに1ポイント獲得にとどまった。

 ダニエル・リカルド(マクラーレン)は、週末を通してノリスに近いペースを見せていた。それは心強い兆候ではあるが、今シーズンは残り4戦だ。彼は来年F1で走らないだろうと自身で認めており、あまり時間が残されていない。

 バルテリ・ボッタス(アルファロメオ)は、鈴鹿でのマシンアップグレードに期待していただろうが、マシンはドライコンディションでは速そうだったものの、予選ではQ3に進むことができなかった。スタートはアルファロメオの弱点で、またもやボッタスはひどいスタートを切ってポジションを落とし、ケビン・マグヌッセンの後ろに落ち、そこから浮上することができないまま決勝を終えた。

 角田裕毅(アルファタウリ)は母国グランプリで週末を通してチームメイトよりも速かった。しかし残念ながら鈴鹿でAT03は高い競争力を発揮しなかった。予選で13番手、決勝では序盤はポイント圏内を走り、7周にわたりラッセルを抑え続ける場面もあった。しかし最後のピットストップのタイミングが遅すぎ、残り周回のなかでトップ10に戻ることができなかった。

2022年F1第18戦日本GP 角田裕毅(アルファタウリ)
2022年F1第18戦日本GP 角田裕毅(アルファタウリ)

■評価 5/10:周冠宇は初のファステストラップ記録も入賞ならず

アレクサンダー・アルボン(ウイリアムズ):予選16番手/決勝リタイア
ミック・シューマッハー(ハース):予選15番手/決勝17位
ケビン・マグヌッセン(ハース):予選18番手/決勝14位
周冠宇(アルファロメオ):予選14番手/決勝16位

 アレクサンダー・アルボン(ウイリアムズ)は、決勝までは、やるべきことをやり、予選ではラティフィより速かった。しかし、得意なはずのウエットコンディションでのレースで、序盤に他車との接触が起き、ラジエターが壊れてリタイアとなった。

 予選でQ2に進んだミック・シューマッハー(ハース)は、決勝で、再度セーフティカーが出動するのを待ってウエットタイヤでステイアウト、一瞬トップを走った。しかし望んだ展開にはならず、他よりも遅いタイミングでピットストップを行ったことでポジションを落とした。

 チームメイトのケビン・マグヌッセン(ハース)も今回は輝けなかった。予選では18番手どまり、レースはポイント圏外でボッタスを抑え続けて走る展開だった。デグナーでストロールをパスするという勇敢な動きが彼にとってのハイライトで、強い闘争心を披露したものの、残念ながら今回は速さがなかった。

 ルーキーの周冠宇(アルファロメオ)は、予選ではQ2で敗退。決勝では1周目にスピンを喫し、後方に落ちた。後半に新品インターミディエイトを追加で投入し、初のファステストラップを記録したが、ポジションはほとんど上げられなかった。

2022年F1第18戦日本GP  周冠宇(アルファロメオ)
2022年F1第18戦日本GP  周冠宇(アルファロメオ)

■評価 4/10:スタート直後にクラッシュしてしまったサインツ

カルロス・サインツ(フェラーリ):予選3番手/決勝3位
ランス・ストロール(アストンマーティン):予選19番手/決勝12位

 カルロス・サインツ(フェラーリ)は予選で最後の数メートルまでポールポジションを争った。それが彼にとって今回の唯一のハイライトだ。決勝ではスタート時の悪コンディションのなかで真っ先にコースオフ、バリアに激しくクラッシュした。そのため決勝パフォーマンスについてポイントを与えることはできない。

 ランス・ストロール(アストンマーティン)は予選でも決勝でもベッテルにかなわなかった。予選では最後のラップでミスを犯し、Q1で敗退した。決勝では、見事なスタートを決めた後、いつもは得意とするウエットコンディションで苦戦、思わぬ場所でオーバーテイクされるなどして、ポイント争いに加わることができなかった。

2022年F1第18戦日本GP カルロス・サインツ(フェラーリ)

■評価 3/10:冷静さを保てなかったガスリー

ピエール・ガスリー(アルファタウリ):予選17番手/決勝18位

 レース1周目に広告パネルを拾ってしまったことでピエール・ガスリー(アルファタウリ)が動揺したのは理解できる。だが、赤旗コンディションであれほど速く走るべきではなかった。あの場所でサインツがクラッシュしたことは彼も承知していたはずだ。いくつかの状況に冷静さを保てず、それが彼のレースの妨げになった。次のアメリカGPまでにインターバルがあるのは彼にとっていいことだ。

ピエール・ガスリー(アルファタウリ)
2022年F1第18戦日本GP ピエール・ガスリー(アルファタウリ)

2022年F1第18戦日本GPの表彰式
2022年F1第18戦日本GPの表彰式

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