【F1ルーキードライバー紹介:サージェント】ウイリアムズから2023年にデビュー。重圧に勝ち千載一遇のチャンスをつかむ
各F1チームがシーズンに2回、F1昇格を狙うドライバーを金曜プラクティスで起用しなければならないという規則が2022年に導入された。その目的は、テストの機会が非常に限られる状況のなかで、若手ドライバーにF1マシンに乗るチャンスを与えることだ。
当連載では、F1ジャーナリストのクリス・メッドランド氏が、FP1ドライバーとして選ばれたドライバーひとりひとりのここまでのパフォーマンスを評価し、将来性を探る。今回はウイリアムズで走り、2023年のレースシートをつかんだローガン・サージェントに焦点を当てた。
───────────────────────────────────
2022年シーズンにフリープラクティスのルーキー起用規則を最もうまく活用したのは、ローガン・サージェントだ。彼はこの規則を2023年のレースシート獲得につなげることができたのだ。
ウイリアムズは以前からサージェントとの契約の可能性を探っていたが、元々は2023年にレースドライバーに起用するつもりはなかった。2020年にはFIA F3でオスカー・ピアストリと同じプレマチームでタイトルを争ったサージェントは、最終戦で4点差でピアストリとの勝負に敗れ、翌2021年もF3に残ることになった。この年、彼は、競争力の高くないチームで走ったにもかかわらず、非常に素晴らしいシーズンを送った。
強力な資金力も持つサージェントにウイリアムズは目を留め、2021年後半にドライバーアカデミーのメンバーとしての契約を結んだ。同時に2022年にサージェントはカーリンからFIA F2にフル参戦することになった。
ウイリアムズとサージェントの契約は2年間で、チームの計画は、2022年にサージェントにF2で経験を積ませ、2023年にタイトル争いをさせるというものだった。その間、F1マシンに何度か乗せて、その後にF1にステップアップさせようと、ウイリアムズは考えていたのだ。
だがチームはその計画を変更せざるを得なくなった。サージェントの元チームメイト、ピアストリの動きが影響したのだ。元々ウイリアムズは、ピアストリをアルピーヌからレンタルし、アレクサンダー・アルボンのチームメイトとして走らせる予定だった。しかしピアストリはアルピーヌ傘下を離れてマクラーレンと契約したため、それが不可能になった。この一連の騒動は、サージェントにとってはまたとないタイミングで起きた。
サージェントは、F2ルーキーイヤーに良いパフォーマンスを見せ、アゼルバイジャンでフィーチャーレース初表彰台を獲得、次のシルバーストンとオーストリアのフィーチャーレースでは優勝を飾り、タイトル争いに加わった。ポールポジションからスタートしたフランスで、マシンに問題が発生し、リタイア。しかしウイリアムズはサージェントへの評価を高め、シミュレーターでの時間を増やすようになった。
イタリアGPで急病のアルボンの代役を急きょニック・デ・フリースが務めたが、それも最終的にはサージェントにプラスに働いた。デ・フリースはF1デビュー戦で見事な走りを見せて9位2ポイントを獲得。これを見たウイリアムズは、ニコラス・ラティフィの後任としてデ・フリースを2023年に起用したいと考えるようになった。しかしデ・フリースに目をつけたのはウイリアムズだけではなかった。
結局アルファタウリがデ・フリースを獲得したため、ウイリアムズの選択肢はまたひとつ減ってしまった。その結果、チームはサージェントに対して、F2最終ラウンドのアブダビでスーパーライセンス取得の条件をクリアするなら、2023年のF1レースシートを与えると告げたわけだ。
公表されてはいなかったものの9月末にそういう動きがあり、サージェントにとって、スーパーライセンス獲得のために、FP1に出場することが非常に重要になった。当時ランキング3位のサージャントは、最終的にトップ6以上に入る必要があった。だが、FP1で1回100km以上を走り、ペナルティを受けなければ、追加のポイントを得ることができ、7位か8位でも目標を達成できる。これは非常に大きい。
FP1初走行が実現したのは母国アメリカでのことだったため、プレッシャーが非常に大きかったが、サージェントは必要なことをしっかりこなして1点を獲得した。その後、ウイリアムズは、サージェントをメキシコとアブダビのFP1でも起用すると発表。驚くべきことに、当時のチーム代表ヨースト・カピートは、スーパーライセンスを取得できれば彼を翌年のレースドライバーに起用すると発言した。
それによって周囲からの注目が突然高まり、サージェントにかかるプレッシャーはさらに大きくなった。メキシコでは何度も赤旗が出たことで、100kmには1周足りず、ウイリアムズは代わりに、極めて異例なことだが、ブラジルではFP2でサージェントを走らせることを決定。サージェントは極めて堅実な走りをし、ペースも良く、ミスもせずに、1ポイントを稼いだ。アブダビではスピンを喫したものの、もう1ポイントを加算することができたし、パフォーマンスも非常に良かった。
F2での最後の2戦を落ち着いて走り、サージェントはランキング4位を獲得、2023年のレースドライバー契約にこぎ着けた。ウイリアムズは、F1最終戦後のアブダビテストを前に、契約を正式に発表。テストでサージェントは初めてプッシュして走り、マシンの限界を探ることができた。
シーズン終盤に多くの経験を積んだことは、デビューシーズンに向けての準備に役立つだろう。1年前には想像していなかったような展開でF1レースシートを勝ち取ったサージェント。ルーキーイヤーには多少の浮き沈みがあることは避けられないにしても、純粋な速さがあるドライバーなので、2023年のうちに何度か印象的なパフォーマンスを見せるに違いない。
積読本や購入予定の書籍の情報を投稿しています
小説/開発/F1&雑談アカウントは、フォロバを返す可能性が高いアカウントです