F1解説:アゼルバイジャンでのペレスの勝因を探る(2)RB19のポテンシャルを引き出せなかったフェルスタッペン
2023年F1第4戦アゼルバイジャンGPで、レッドブルのセルジオ・ペレスが、チームメイトのマックス・フェルスタッペンを破って優勝を飾った。ペレスが2度のチャンピオンに勝った理由を、F1i.comの技術分野を担当するニコラス・カルペンティエルが分析する。
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第1回「フェルスタッペンを凌ぐレース運びのうまさ」 で、ペレスの勝因として、バクーを得意としていること、レース運びの巧みさ、フェルスタッペンがタイヤを守ってペースを落としすぎたことを挙げた。
さらなる勝因について語ろう。それは、フェルスタッペンがこの週末のRB19を自信を持って乗りこなせなかったことだ。フロントエンドがうまく入らないことで、アンダーステア傾向を消すことができない。その結果、ターン2、3、8の入口でのブレーキングでペレスに遅れを取ってしまった。
フェルスタッペンはレース後、「コーナーの入り口からクリップにかけて、マシンが最適ではなかった。だからいいバランスを見つけようと思って、何度もブレーキバランスやデフを変え続けた」と語った。
「でも挙動は変わらず、ペースが伸びなくて、なんとかうまくいったのは残り10周になってからだった。今週末はチェコとは少し違うベースセッティングで、それが今回のタイヤに合っていなかったかもしれない。とにかくこの週末は、マシンのポテンシャルをフルに発揮できなかった」
完敗宣言と言っていいだろう。
すでに序盤9周目にはフェルスタッペンのリヤタイヤにささくれ摩耗が発生していることが、中継映像でも確認できていた。フェルスタッペンは無線で 、「タイヤが全然ダメだ」と訴えた。
一方ペレスはその間、順調にペースを上げ、コンマ9秒まで詰め寄った。そのままではDRSを使うペレスに抜かれるのは、時間の問題だった。
そこで担当レースエンジニアのジャンピエロ・ランビアーゼは、フェルスタッペンに10周目のピットインを指示した。しかしそれは結果的に、最悪のタイミングでの選択だった。ニック・デ・フリースのコースオフによるイエローフラッグが、セーフティカーに切り替わり、フェルスタッペンの優位は一瞬に消滅したのだ。
2021年にフェルスタッペンがタイヤバーストに見舞われ、ペレスがバクーでの初優勝を挙げた際には、運がより大きな役割を果たした。しかし今回の2勝目は間違いなく、ペレスが実力でもぎ取ったものだった。序盤にフェルスタッペンにかけ続けたプレッシャーが、エンジニアにピットストップを前倒しさせる決断を下させたのが、何よりの証左である。
今回に限らず、市街地サーキットでのペレスが、フェルスタッペン以上の速さを安定して発揮し続けているのは確かな事実である。
クリスチャン・ホーナー代表は、こう指摘する。「チェコのレッドブルでの勝利は、すべて市街地コースでのものだ。バクーで2回目の優勝を果たしたし、去年はシンガポールとモナコで、今年はジェッダで優勝している。あとはただ、通常のサーキットで今回のようなパフォーマンスを発揮するだけだ」
普通に考えれば、フェルスタッペンのような才能の持ち主をコンスタントに打ち破ることは、かなり難しいだろう。しかし今季のペレスの勢い、そしてRB19の自信に満ちた乗りこなし方を見ると、ひょっとしたらという期待も湧いてくる。
ホーナー代表がそんな下剋上を心から望んでいるかどうかは、また別の話だが。
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