レッドブル&HRC密着:“ペースコントロール”で勝負に出たフェルスタッペン。後続のアンダーカットに対処し14勝目
ドライバーズチャンピオンを土曜日のスプリントで決めたマックス・フェルスタッペン(レッドブル)にとって、日曜日のF1カタールGP決勝レースは3度目のチャンピオンとして臨む最初のレースだった。
しかし、そのレースはタイヤの使用に関する制限が課せられた前代未聞のルールのなかでスタートした。
その制限とは、1セット最大18周というもので、全ドライバーに課せられたのだが、レッドブルにとってはあまりうれしくないルール変更だった。
フェルスタッペンはこう言う。
「僕たちのクルマはロングランで安定して速いから、18周という制限が加えられると、僕たちのアドバンテージがあまり活きないんだ」
それでも、フェルスタッペンは与えられたルールのなかで、1セット18周という制限によって失ったアドバンテージを挽回してみせた。
そのひとつが、絶妙なペースコントロールだ。
1セット18周制限という特別ルールによって、57周で争われる日曜日のレースは最低でも3ストップしなければならなくなった。これにより、カタールGPはタイヤのデグラデーション(劣化)をあまり気にすることなく、全周フルアタックに近いハイペースの展開になることが予想された。
しかし、ポールポジションからスタートしたフェルスタッペンは、競馬でたとえるなら『馬なり』でペースを落ち着かせる作戦に出た。それを直後で見ていたマクラーレン勢はアンダーカットするために早めにピットインしてきた。マクラーレン勢がピットインする直前の11周目のフェルスタッペンのラップタイムは1分29秒357。12周目にピットインしたオスカー・ピアストリ(マクラーレン)と13周目にピットインしたランド・ノリス(マクラーレン)の15周目のラップタイムはそれぞれ1分28秒677と1分29秒171。アンダーカットは成功したかに思えたが、同じ15周目のフェルスタッペンのラップタイムはスタートから履き続けたタイヤにも関わらず、1分28秒712とマクラーレン勢とほとんど変わらなかった。
つまり、フェルスタッペンはマクラーレン勢ふたりがいなくなったのを確認してから、ペースを上げたのだ。
1セットのタイヤで最大18周しか走れない状況において後ろを走るマシンがピットストップ戦略で逆転する場合、アンダーカットしかないことを見越したフェルスタッペンとレッドブルの頭脳的な作戦だった。
またこの『馬なり』作戦には、もうひとつの理由があった。全周フルアタックに近いハイペースの展開になると、燃費が厳しくなる。
2番手のピアストリとの差が最後のスティントで3秒まで縮まったのは、それも関係していた。
タイヤに制限が加えられ、結果的に燃費が厳しくなったカタールGPで、フェルスタッペンが見せた戦法は、速いマシンを速く走らせることではなく、周りのペースを見ながらトップでチェッカーフラッグを切るという3度のチャンピオンにふさわしい熟練の技だった。
積読本や購入予定の書籍の情報を投稿しています
小説/開発/F1&雑談アカウントは、フォロバを返す可能性が高いアカウントです