【F1チーム代表の現場事情:アルピーヌ】ビッグチームに対し一歩も引かず。新天地での最初の大仕事は予算制限めぐる戦い
大きな責任を担うF1チーム首脳陣は、さまざまな問題に対処しながら毎レースウイークエンドを過ごしている。チームボスひとりひとりのコメントや行動から、直面している問題や彼のキャラクターを知ることができる。今回は、長年フォース・インディア/レーシング・ポイント/アストンマーティンの責任者を務め、今年初めにアルピーヌF1チームの代表に就任したオットマー・サフナウアーに注目した。
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F1界では珍しいことではないが、今、ある騒動が起きている。
このスポーツにおいて意見の不一致が起こる最も一般的な分野は、金銭問題だ。大規模チームと小規模チームの意見が一致することはなく、それぞれが自分の立場を守ろうとする。
ビッグチームはより多くの資金を使いたいが、小規模チームはそれを望まない。レッドブル、フェラーリ、メルセデスは、インフレに伴い、予算上限額の引き上げを求めているものの、他のほとんどのチームはその考えに反対し、ビッグチームに対し、開発費を減らせば済む話だと反論している。
予算上限額引き上げに反対しているひとりが、アルピーヌ代表オットマー・サフナウアーだ。彼はスペインGPとモナコGPの2戦の間に、この問題について積極的に発言していた。
サフナウアーは、今年初めにアルピーヌに加入、それ以来、新しい職務に慣れることに集中してきた。だが、バジェットキャップの議論が高まるなか、彼は本領を発揮し始めている。
モナコGP土曜に行われたF1チーム代表記者会見に登場したサフナウアーには疲れの色が見えた。ちなみに、彼がこの日、疲れていたのにはわけがある。金曜夜、チームが主催したスポンサーイベントに出席するために、サフナウアーはスマートな服装に着替えてスクーターで会場に向かった。しかし許可を得ていたにもかかわらず、彼は通行を許されず、スクーターを置いて会場を目指さなければならなかったのだ。
明らかに前夜の疲れを引きずった様子のサフナウアーは、記者会見でジャーナリストから投げかけられた質問を頷きながら聞いていたにもかかわらず、答える段になると、「申し訳ないが、質問は何だったかな?」と聞き返すありさまだった。
しかし、自分が重要視しているバジェットキャップについての議論が続くうちに、サフナウアーは集中力と活気を取り戻し、「規則をシーズン途中で変えるのは間違っている、決めたことをやり通すべきだ」と強く主張した。
サフナウアーは、ビッグチームは自分たちのメリットのために制限額を引き上げようとすべきでないと考えており、レッドブルのチーム代表クリスチャン・ホーナーの「このままでは一部のチームがシーズン終盤に欠場せざるを得なくなる」との主張を笑い飛ばしている。
「輸送費が250万や350万値上がりした場合、開発予算が2000万なら、開発予算を1700万にすれば、制限額に収まるのではないか? つまり(予算制限を守ることは)可能ということだ」とサフナウアーは言う。
「その場合、開発が制限される。そのため、資金がある者は、FIAのところに行って、開発予算を保つために上限額を引き上げるよう働きかける方がずっと簡単というわけだ」
「(いくつかのチームが欠場するなら)我々のチャンピオンシップの順位が上がる。だから歓迎するよ。そうなることを想定すべきなのかな? 彼(ホーナー)は冗談を言っているだけなのか?」
もちろん、サフナウアーは、ビッグチームに思いどおりにさせないよう、その目論みを潰したいと考えている。ビッグチームがより多くの予算を使うことを許されれば、彼らはマシン開発をさらに進めることが可能になり、中団をすぐに置き去りにしてしまうだろう。だがバジェットキャップに変更がなければ、アルピーヌを含む中団勢は、ビッグチームに近い位置を維持し、来シーズンも彼らに近づくチャンスがあるかもしれない。
予算に関する戦いに勝つか負けるか。それが長期的な将来に影響を及ぼす可能性がある。サフナウアーは自分のチームができる限り有利な立場に立てるよう、この戦いにおいて最善を尽くす決意を固めている。
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