F1技術解説:第7戦(2)全チームが注力したモナコ特有のステアリング設定と基本構造

 

 2022年F1第7戦モナコGPで各チームが走らせたマシンを、F1i.comの技術分野を担当するニコラス・カルペンティエルが観察し、印象に残った点などについて解説。第1回「本来負けるはずがなかったフェラーリ。F1-75が持つ明らかな優位性」に続く今回のテーマは、全チームが注力したモナコ特有のステアリング設定と、ステアリングの基本構造だ。

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 超低速市街地コースのモナコでは、どのチームもステアリングに変更を施してきた。ステアリングラックの比率を変更し、前輪の舵角を大きくすることで、ステアリング操作量が同じでもより大きく曲がるようにした。それでも1速で曲がるグランドホテルヘアピンでは、ドライバーたちはステアリングをほとんど180度回す必要があった。
 またこの変更による前輪との干渉を避けるため、サスペンションやフロントウイングにも調整を加えている。

 F1マシンの他のシステムと比べると、ステアリングの機構自体は比較的シンプルな装置といえる(ステアリング上のスイッチ類は複雑の極地であるが)。他の操作系(スロットルなど)と異なり、ステアリングホイールの動きは物理的な機構によって車輪に伝達されるよう、技術規約で定められている。パワーアシストは許可されているものの、電子制御を介さない純粋な油圧システムで作動する。

フェラーリF1-75とレッドブルRB18のフロントサスペンション
フェラーリF1-75とレッドブルRB18のフロントサスペンション

「ステアリングは、車の油圧システムの一部になっている」と、アストンマーティンのテクニカルディレクター、アンドリュー・グリーンは説明する。  

「ずいぶん以前に電動ステアリングをテストしたことがあったが、重すぎてダメだった。マシンに搭載されている油圧システムを利用する方がはるかに効率的ということだ。全チームのステアリングシステムを把握しているわけではないが、ほとんどはうちと同様の油圧式ステアリングを使っていると考えていいと思う」

マクラーレンMCL36とメルセデスW13のフロントサスペンション
マクラーレンMCL36とメルセデスW13のフロントサスペンション

 ステアリングラックの動きは、250barの圧力を供給できる油圧ポンプと、多くのチームにムーグ社が供給するサーボバルブによって補助される。ステアリングボックスは、ステアリングコラムと機械的に接続されている。

 ステアリングの回転運動はステアリングボックスに伝えられ、ステアリングボックスはそれを油圧という形でダブルシリンダーに右または左に再分配し、ステアリングの動きを有効にする。この油圧シリンダーは、車輪のステアリングボールジョイントに直接作用する。

 モナコでの主な開発内容は、ステアリングの変更とブレーキダクトの拡大だった。このコースが非常に特殊であることに加え、1週間前に開催されたスペインGPの後で、チームにマシンアップデートの時間がほとんどなかったからだ。

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