【F1チーム別技術レビュー:レッドブルRB18(2)】ニューウェイ設計の独創的サスペンションがもたらしたふたつの効果
F1技術レギュレーションが大幅に変更された2022年に主要チームが導入したマシンを、F1i.comの技術分野を担当するニコラス・カルペンティエルが評価、それぞれの長所・短所、勝因・敗因について分析した。最初に取り上げるのは、シーズンを席巻したチャンピオンマシン、レッドブルRB18。第1回「ポーパシングを予見したニューウェイがフロアに施した工夫」 に続く第2回目は、独創的なサスペンションがもたらした効果について解説する。
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■サスペンション設計に注力したニューウェイ
F1にグランドエフェクトが復活した2022年、レッドブル・レーシングのチーフテクニカルオフィサー、エイドリアン・ニューウェイは、安定したダウンフォースを発生させることを重視して、RB18のフロアを設計した。
重要だったのは、フロア下のデザインだけではない。RB18の空力的な安定性には、ニューウェイが自ら設計した優れたサスペンションも大きく貢献している。グランドエフェクトカーは実際のコース上では、理論的にベストな状態で走り続けることができない。そのことを、ニューウェイは、過去の経験から思い出したのだった。
「このマシンには、ギブアンドテイクが必要だ」とニューウェイは言う。「車高、ダウンフォース、そして車体の跳ね。それらの最適な妥協点を見つけることがコツなんだ」
「このマシンでは私自身が、フロントとリヤのサスペンションを設計した。角度の制約こそあるが、足回りの設計についてはレギュレーション上、ある程度の自由が認められているからね」
レッドブルは、フロントサスペンションはプルロッド式、リヤはプッシュロッド式に変更した(ちなみにマクラーレンもMCL36で同様の変更を行っている)。だが、RB18のサスペンションの独創性は、ジオメトリーよりも運動特性にある。
リヤサスペンションでは、フェラーリとは逆に、ダウンフォースを高める方向ではなく、幅広い車高に対応するために十分なストロークを確保することを重視した。コーナーでのダウンフォースを一定にして、ドライバーに自信を与え、タイヤの劣化を抑えるというふたつの効果を狙ったのである。
RB18の車高は静止状態では他のF1マシンに比べて高いが、高速走行時には抵抗を減らすためにサスペンションが大きくたわみ、それが優れた最高速度を生み出すひとつの要因となっている。
しかし、このようにマシンが下がるためには、サスペンションをかなり柔らかくする必要がある。他のマシンだと、このような柔らかさはバウンシングを引き起こす。例えばメルセデスW13では、ポーパシングを抑えるためにサスペンションを極端に硬くしなければならず、その結果、今度はタイヤによってマシンが跳ねてしまうという現象が起きた。
一方、レッドブルRB18は、比較的柔らかいサスペンションを機能させることができる。これにより安定した空力プラットフォームだけでなく、タイヤの負担を軽減するハンドリングも実現した。予選ラップではフェラーリF1-75ほどの爆発力はないが、日曜日には最速を記録した。
2022年のF1マシンは前モデルよりも乱気流の影響を受けにくく、以前とは異なりポールポジションからスタートすることが不可欠ではなくなったことを、レッドブルはフェラーリよりもよく理解していたということだ。
■シーズンのなかで大幅軽量化にも成功
堅牢でパワフルなホンダのパワーユニット(RBPTH001)を搭載したRB18は、一方でシーズンを通じて大幅な軽量化にも成功した。
開幕当初はフェラーリよりも重かったが、次第にフロントを中心に重量が減り、マックス・フェルスタッペン好みの重量配分になり、コーナー進入時に、早めにマシンを回頭できるようになった。この新しいバランスはセルジオ・ペレスには合わなかった一方で、フェルスタッペンにはシーズン後半にかけて無敵の力を発揮させた。
RB18はレッドブルが生み出した最高のF1マシンのひとつと言える。忘れてならないのは、1998年と2009年に行われた過去の空力ルール変更を最もよく消化し、優れたマシンを作り上げたたのも、やはりニューウェイだったという事実だ。
投入当初から圧倒的な強さを誇っていたというわけではなかったが、マクラーレンMP4/13とレッドブルRB5は、当時のF1の空力トレンドを決定づけた。RB18も同じようになるかどうかは、これから明らかになっていくことだろう。
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