WECでのインシデントを受けて、元F1ドライバーのブランドルがタイヤブランケット禁止案に伴う危険性を指摘

 

 元F1ドライバーで、『Sky F1』の解説者を務めるマーティン・ブランドルは、F1がタイヤウォーマーの使用を禁止しようとしていることについて“意味がない”と述べており、先日スパ・フランコルシャンで開催されたWEC世界耐久選手権で冷えたタイヤがいくつかのインシデントを引き起こしたことを受けて、こうした動きの危険性を警告している。

 スパで行われたWECの第3戦ではオー・ルージュに向かうアウトラップで何人かのベテランドライバーがクラッシュしたが、最も大きなインシデントは、アントニオ・フォコが駆るフェラーリ499Pの50号車によるものだった。フォコはピットを出た直後にコントロールを失い、冷えたタイヤに不意に足を取られ、コースをそれてバリアに衝突した。

 スパの肌寒いコンディションがこのインシデントの要因であることは確かだが、FIAが2023年シーズンを前にタイヤウォーマーの使用禁止を決定したことが危険な状況を招いたというのが、スパの出場者全体の意見だ。

 F1、FIA、および各チームは、2024年からタイヤウォーマーを禁止する規制案について、今夏のイギリスGP後に投票を行うことになっている。F1の独占タイヤサプライヤーであるピレリは、タイヤブランケットを必要としない製品の開発を進めてきた。この動きはF1におけるサステナビリティを重視した取り組みの一環だ。予熱を必要としないタイヤの製造は容易ではないが、ピレリによると開発は進んでおり、イギリスGP後のテストに間に合うように製品を供給できるという。このテストを経て最終的な判断が下され、次いで投票が行われる。

 スパでのインシデントを受けて、F1でのタイヤウォーマー禁止の影響についてファンから寄せられた懸念に対しブランドルはツイッター上で、F1での禁止は非常識であり、ドライバーだけでなくマーシャルも危険にさらすことになると指摘した。

「F1がタイヤヒーターを禁止することは意味がない。マシンはクラッシュし、コスト削減や効率化が台無しになるだろう。ドライバーとマーシャルは高い危険にさらされる。テスト、フリー走行、予選、レースでレーシングタイヤを温める最も高価で非効率的な方法は、F1マシンを使うことだ」

 ブランドルが懸念していることについては、今年初めにルイス・ハミルトン(メルセデス)がすでに声を挙げており、この変更の利点に疑問を呈して“意味のない施策”だと指摘していた。

「危険だと思う」とハミルトンはバーレーンで語った。「ブランケットなしのテストを行ったことがあるが、どこかの段階で何らかのインシデントが起きると感じた。だからこれは間違った決定だ」

「タイヤを機能させるために、数周走る必要がある。ブランケットをなくせばいっそうサステナブルになり、環境に良いというのがそもそもの議論だが、実際にはタイヤの温度を上げるためにより多くの燃料を消費してしまう」

「さらに懸念しているのは、コースに出て行くときだ。マシンがよく滑り、挙動が安定しない。そこにタイヤがフル性能を発揮しているマシンが来たら、簡単に衝突してしまうかもしれない。こうしたことを考えると、意味のない施策だ」

ルイス・ハミルトン(メルセデス)
2023年F1第1戦バーレーンGP ルイス・ハミルトン(メルセデス)

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