【F1オーストリアGP決勝の要点】車体&コース特性が相まってトラックリミット違反は83件。規則の緩和も必要か
今季のFIAは、ドライバーたちがコースからはみ出して走ることで有利になる、いわゆる「トラックリミット違反」を厳しく取り締まってきた。しかしF1第10戦オーストリアGPのそれは尋常なレベルではなく、決勝レースはほとんど小学生レベルの告げ口合戦になっていた。
レース序盤にはランド・ノリス(マクラーレン)が、「ルイス(・ハミルトン)が、またトラックリミットだ。もう3回目だよ」と報告したかと思えば、ハミルトン自身も「ペレスはターン10で毎回飛び出してるぞ」といった具合。
レース後、FIAはトラックリミット違反の疑いは「1200件以上あった」と表明した。しかし同時に、「多くの違反が、スチュワードに紹介されていなかったことも判明した」と、公式リリースで述べている。平たく言えば、「違反件数が多すぎて、とてもすべてを確認できなかった」と、お手上げ状態だったことを認めた。
その結果、冒頭で述べたようなライバルに対する告げ口合戦、それでも何もペナルティを下されないことへの欲求不満が、ドライバーたちに溜まっていった。さらに深刻だったのは、通常なら3回目の違反で黒白旗が掲示され、チームから「これ以上はみ出すな」と警告できるはずが、FIAによる違反確認が後手後手に回ったために、いきなり5秒、あるいは10秒のペナルティを受けたことだ。
そしてトドメの一撃が、レース後のアストンマーティンによる「ペナルティが適切に科されていないドライバーがいる」という抗議だった。この抗議はすぐに認められ、再検証の結果、エステバン・オコン(アルピーヌ)の30秒ペナルティを筆頭に、カルロス・サインツ(フェラーリ)やルイス・ハミルトン(メルセデス)、角田裕毅(アルファタウリ)ら計8人に12件のペナルティが追加された。これによって4位でチェッカーを受けたサインツは6位、7位ハミルトンは8位に、逆に6位だったフェルナンド・アロンソ(アストンマーティン)は5位に繰り上がるなど、最終結果は少なからず変化した。
それにしてもペナルティを受けるとわかっていて、なぜドライバーたちはトラックリミット違反を犯してしまうのか。まず挙げられるのが、現行マシンの視認性の悪さだ。18インチとホイールが大型化し、さらにタイヤ上部にフェアリングが付いたことで、白線をはみ出したかどうか、確認はほとんど不可能だという。
「それでもFIAがすぐに『違反した』と言ってくれれば、気をつけることもできる。でも今回は、そんなフィードバックがほとんどなかったからね」と、アレクサンダー・アルボン(ウイリアムズ)は言っている。一方マックス・フェルスタッペン(レッドブル)は、「これだけ高速で周回していると、白線なんてほとんど見えない」とコメント。サインツは「先行車のダーティエアーにさらされると、すぐにコースを出てしまう」と、車体特性を問題視していた。
決勝レースで確定した83件の違反は、すべてターン9、10に集中していた。ここは外側にランオフエリアが広がり、はみ出してもタイムロスの影響は少ない。なのでグラベルトラップに変更するのが最も効果的だ。実際FIAは、以前からその種の改修をサーキット側に要請しているという。
しかしレッドブルリンクではMotoGPなど二輪レースも開催されており、グラベルに作り替えるのは難しい。ならばこのふたつのコーナーだけでもトラックリミットの規定をより緩やかにするなどの措置が、必要かもしれない。
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