グラウンドエフェクトカー導入で苦戦。マシン特性ゆえに改善が遅れ、1勝に終わったメルセデス/2022年F1戦力分析(4)
新たな技術規則が導入され、前年までとはまったく異なるマシンが誕生した2022年シーズンのF1。マシンの特徴やシーズン中のアップデート、ドライバーのパフォーマンスなどから、各チームの戦力を振り返る。第4回となる今回は、コンストラクターズ選手権3位のメルセデスだ。
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グラウンドエフェクトカーの導入によって、2022年シーズンに最も大きな影響を受けたチームは、間違いなくメルセデスだった。プレシーズンテストからふたりのドライバーを悩ませたのがポーパシング(ポーポイズ現象)だった。マシンが高速走行に入るストレート上などで、マシンが細かく上下動するこの現象によって、ドライバーはブレーキングでたびたびミスを犯した。
2022年はメルセデス以外の多くのチームもポーパシングに悩まされていたが、とりわけメルセデスが深刻だったのは彼らがライバルたちよりもリヤの車高を低く設定していたからだったと考えられる。
ポーパシングはダウンフォースが増した状態で車体が空気の力で地面に押し付けられ後、リヤの車高が低くなりすぎたためにダウンフォースを失って(これをダウンフォースがストールすると言う)、リヤの車高が上がるという現象が断続的に繰り返されることを言う。
しかし、メルセデスはライバルたちよりもリヤの車高が低いため、ダウンフォースがストールする前に、フロアのリヤ側が路面に打ち付けられる、バウンシングという状態となっていた。
路面がスムースなバルセロナ-カタロニア・サーキット(第6戦スペインGP)でバウンシングに苦しまなかったのに、バクー・シティ・サーキット(第8戦アゼルバイジャンGP)ではコクピット内で下半身に衝撃を受け続けたルイス・ハミルトンがレース後にパルクフェルメでマシンを降りることがなかなかできなかったのはそのためだった。
この時点で多くのチームは車高を調整したり、空力処理によってポーパシングに対処していたが、メルセデスの苦悩はその後も続いた。それはメルセデスの空力哲学がリヤの車高を低くして走ることを前提にしていたからだった。メルセデスのマシンは空気抵抗が大きいという悪癖を持っていた。そのため、リヤの車高を上げるとさらに空気抵抗が増えるため、なかなか変更できなかった。
第21戦ブラジルGPでジョージ・ラッセルが優勝できたのは、メルセデスのマシンそのものの戦闘力が上がったというより、メルセデスがポーパシングによる肉体的ダメージ軽減を国際自動車連盟(FIA)に働きかけ、空力に関するレギュレーション変更を行ったことにより、レッドブルとフェラーリの戦闘力が落ちたためだった。
2013年以来の無冠に終わるという厳しいシーズンのなかでも、ドライバーたちはモチベーションを失わずにレースを戦っていた。2007年にF1にデビューして以来、初めてシーズン未勝利に終わったハミルトンだが、「記録のことは気にしていない。これまで最悪だった2011年(チームメイトのジェンソン・バトンに負け、選手権5位に終わる)よりは、まだマシだった」と語った。
また2022年にウイリアムズから移籍してきたばかりのラッセルが、ハミルトン相手にほぼ互角のパフォーマンスを披露して、ドライバーズ選手権でフェラーリのカルロス・サインツをも上回って4位につけたことは、2023年に復活を目指すメルセデスにとって力強い結果となったことだろう。
数チームでチーム代表を含めたスタッフの移籍や異動による体制変更が行われているなか、主要スタッフに動きがない点も不気味。2023年、最も注意しなければならないチームであることは間違いない。
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