ホンダF1復活の立役者のひとり、HRC浅木泰昭氏が定年退職で最後の挨拶「だからこそ、続ける価値がある」
マックス・フェルスタッペンの2年連続のドライバーズチャンピオン獲得、そして昨年はレッドブル・ホンダのコンストラクターズタイトル獲得と、強いホンダ復活の立役者のひとりであるホンダ/HRC Sakuraのパワーユニット(PU)開発責任者、浅木泰昭氏が4月いっぱいで同社を定年退職することになり、ファンにお別れの会を兼ねたトークショー、その後、メディアの取材に答えた。
4月2日にホンダ青山で行われたF1第3戦オーストラリアGPの決勝ライブビューイングで、レースの前後に登壇してこれまでのホンダでの活躍、そしてF1のエンジン、パワーユニット開発について振り返った浅木氏。オートスポーツwebのF1記事でもお馴染みのジャーナリスト、柴田久仁夫さんを相手に、事前に集められたファンからの質問にも答えるなど、硬軟織り混ざったさまざまな質問に答えた。
その中でも印象的だったのは、やはり第4期の参戦で当初苦しんだホンダのPUが強くなっていた過程で、さまざまなホンダ社内の別部署のスタッフたちの協力に助けられたこと。
「アメリカホンダのホンダジェットの技術の導入(シャフトの振動対策や軸受けなど)、そして高速燃焼が可能になった際にはこれまで起きなかったトラブルが出てきて、その対策として熊本製作所に助けてもらいました(二輪開発の技術、シリンダー内のメッキ処理など)」と、ホンダグループとしての協力に感謝を述べた浅木氏。
「F1のスタッフはヨーロッパではいろいろなチームを渡り歩いている中、ホンダはすごく逸出な存在。いわゆるサラリーマンの集まりですが、そのサラリーマンが無謀な挑戦ができる数少ない会社だと思います」と、ホンダのF1挑戦、そしてレースがDNAと公言し続けるホンダという会社の強みについて振り返った。
そのトークショーの中では『F1は容赦がない。だからこそ続ける価値がある』など、これまでの浅木氏の名言もいくつか振り返られ、改めてF1挑戦の難しさ、そして目的を達成した時の喜びの大きさが浅木氏より語られた。
トークショーの中では、2026年以降のホンダについても浅木氏に質問が及び、「私は答える立場にはないが、2026年以降もホンダがF1にいるというつもりで続けている」と回答。現在のPU開発凍結についても「できること(パフォーマンス改善)は絶対にあると信じている。エンジニア、開発者のモチベーションがなくなるということはない」と、ホンダ/HRCのPU開発陣の想いを代弁した。
これからのホンダ、HRCの若いエンジニアたちにも「人生は1回なので、やりたいことをやってみて、それが楽しいと思えると人生も楽しくなる。新しい、若い人たちが未来を切り開いて行ってくれると信じています」と、言葉を贈った浅木氏。フェルスタッペンのオーストラリアGP優勝の喜びと共に、最後はファンの前で花束を受け取り、大きな拍手とともに会場を後にした。
今年春にホンダを退社した元F1マネージャーの山本雅史氏、そして現場のホンダエンジニアを統括した元F1テクニカルディレクターの田辺豊治氏との3人体制で、強いホンダを見事に復活させた浅木氏。この日が公に姿を現す最後の日ということもあり、ホンダとF1の関わりが次のフェーズに入ったことを強く感じさせたイベントとなった。
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